「台湾に送ったワクチンで大量死」報道の真相

台湾に関するフェイクニュースの見分け方と台湾理解

だが、とくに2020年になってコロナ対策で台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏など台湾人に注目が集まり、タピオカに続き台湾パイナップルが日本でブームとなるなど台湾への関心が強まっている現在、フェイクニュースでさえこれほど広がるというのは、台湾情報の価値が高まったからと言えるでのはないか。

そう考えれば少し皮肉ではあるが、このことは1つの必要性を示している。つまりデマやフェイクニュースに惑わされず、「日台友好」という関係をきちんと機能させていくためには、現状を知るだけでなく歴史や地理、社会政治といったさまざまな角度からの台湾理解を進めながら情報を判断するのが重要ということだ。

台湾の在日大使館にあたる台北駐日経済文化代表処の謝長廷・代表は自身のフェイスブックで、「日本提供のワクチンに対する行きすぎたバッシングは、以降の日本からのワクチン支援に影響する」と投稿した。これは台湾の一部の人々に向けたコメントだが、同時に日本に対しても同じことが当てはまる。

「親日」を超えた公平な台湾理解が必要

前述したような記事を多くの日本人が信じた結果、日本世論は「もう台湾にワクチンを送るのは遠慮しよう」という流れに発展するかもしれない。1つの記事が作り出したデマが、多くの台湾の方の感謝の気持ちを踏みにじり、台湾人の生命に影響をもたらす事態になるといっても過言ではないのだ。

フェイクニュースは、実に巧妙に作られる。すべてがウソというわけでもない。しかし、かなり極端な「ホント」を拡大し、そのうえで虚実取り混ぜて作成される。さらに、「安倍晋三前首相が主導」といった政治家の名前を入れることで、政治的な志向を異にする人たちの関心を引き寄せる状況も見られた。

そういった一部の人たちにとり、こうした台湾情報は現政権を攻撃できる材料でしかないように思える。また、「日本で使っていないアストラゼネカ製ワクチンを提供するのは申し訳ない」という、多くの日本人がどことなく持っていた後ろめたさを実に刺激したことについては、卑劣の一言に尽きる。

「台湾は親日だから好き」「敵の敵は味方」といった考えも危うい。台湾はかつて日本の植民地であり、歴史的にも政治的にも、そして心理的にも解決されていない問題は、実はまだ残っている。さまざまなバックグラウンドを持つ人で構成される多様社会であり、日本に関心がない、またはよく思っていない人ももちろんいる。「親日だから、そうした不満を言わないはず」という決めつけは、公平・平等な相互理解を妨げる。

互いに問題点をしっかり指摘し合い、解決をともに探ることができ、ともに明るい未来を目指す「真の友情」を求めるのであれば、それこそどんなデマやフェイクニュースにも惑わされない、強い結びつきが必要とされるだろう。悪意のある情報やデマは「ウイルス」であり、本物のウイルスと同じく素早く伝播し、人の命を奪うことさえある。そして、手を変え品を変え、これからも次々と現れるだろう。それに対抗するためには、お互いにきちんと知っていく、正確な情報や多角的な理解の深まりこそが「ワクチン」なのではないだろうか。

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