「台湾に送ったワクチンで大量死」報道の真相

台湾に関するフェイクニュースの見分け方と台湾理解

その中には、一見冷静に出来事を説明しているように見えるが、実態と異なることや根拠のないことをちりばめた悪意の塊のような文章が少なくない。しかも、「日本から台湾に送られたアストラゼネカ製ワクチンで大量死」、「ワクチンを送った日本に対し反日感情が高まって台湾で暴動寸前」というきわめて扇情的な記事もあった。

台湾人で北海道大学法学研究科助教の許仁碩氏は、これらの記事の論点や傾向を整理してどういった性格のものかを分析している。許氏は、「今は日台関係が良いので影響も限定的だが、何かしら日台関係に摩擦があるときには、これらの論調が含む問題に日本人が気づけるかどうか」と指摘している。私もこれには同感で、日本読者の台湾リテラシーが試される危うさを感じており、この状況は楽観できず、こうした記事の目的を注視していかなければならないと考えた。

公式データでもわかるワクチンの有効性

そして、こういった悪意を持ったネガティブな情報に対抗するために、台湾のこれまでの歴史や現在の立場について、もっと日本の方々に理解を深めてもらうのが効果的だと考え、筆者も「まさかの時の友こそ、真の友――日本のワクチン支援、台湾人を感動させたもうひとつの意味」という記事を書いた。

台湾では2021年6月14、15日から、日本が提供したアストラゼネカ製ワクチンの接種が、高齢者を対象として行われている。そして接種後に死亡が相次いでいるというニュースが流れ、接種を不安に思っている人も確かに少なくない。ただ、これは、接種への不安を感じている人の多い日本やその他の国々と同じ状況だろう。

中央感染指揮センターの陳時中部長はこれに対し、同じくアストラゼネカ製を承認している韓国やイギリス、アメリカと比較して台湾が特別多いわけではないこと、死亡原因は追跡調査を行ってきちんと明らかにすること、ワクチン接種はリスクよりも有効性のほうが大きいことを強調した。

さらに言えば、多少の不安感はあるとはいえ、それを日本のせいにする台湾人はめったにいない。不満の矛先を向けているのは台湾政府に対してであって、ましてや暴動寸前というのはまったくのデタラメである。

間違った情報が日本で広まることへの危機感を持ち、公式の統計データを用いて日本人向けにツイッターで解説する台湾人もいる。ツイッターでそういった公式データを分析した結果を公表したkaito2198氏によれば、2021年6月20日時点でのワクチン接種後の死亡者は64人。そのうち90歳以上は15人、80歳以上が32人、70歳以上は8人、69歳以下は9人となっている。接種してから亡くなった時間も、接種当日から接種4日後までとまちまちだった。kaito2198氏のような民間パワーが、正しい情報を見つけ解説して広めるなど、フェイクニュース対策の協力者の役割を担っている。

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