「私はファイザーだった!」声高に喜ぶ人の心理 イタリアでなぜ「アストラゼネカ」が不人気か

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距離を開けて40~50人ほどが座って待っている。ファイザーだと思い込んでいるけど、本当にそうだろうか? アストラゼネカと言われたらどうする?という不安が一瞬頭をよぎる。

15分ほどで順番が回ってきた。ブースに入ると、年配の女性医師と若い女性アシスタントのような人が「大変お待たせして申し訳ありません、どうぞおかけください」と、とてもにこやかだ。イタリアの病院といえば、医療スタッフはみんな無愛想で、時には意地悪とも言えるほど雑な対応なことが多い。普段とのあまりの違いにびっくりすると同時に、緊張がすっとほぐれる。そして「シニョーラ(奥さん)は日本のどちら出身ですか? へー、東京なんですね。死ぬまでにぜひ一度行かなきゃいけないと思っているところですよ」なんておしゃべりしながら、簡単な問診が始まった。

写真を撮ってもいいかと尋ねたら、「お待たせしたお詫びに、私が撮りましょう!」と先生自ら数枚撮ってくれた(写真:筆者提供)

そして「ファイザーを接種しますね」というドクターの一言。ファイザーだからといって副反応がないわけではないが、やっぱり肩の荷が少し軽くなった気分だ。注射はまったく痛くなく、さっと終わった。別の出口から接種後の待機室に案内される。15分待つ間に次回の予約表と、ラヴァッツァのコーヒーチケットをくれた。最近バールも普通に営業が再開されたから、帰りに一杯飲んで行こうかな、などと考えていたら、私の後ろに座っていた若い女性が具合が悪くなり、床に倒れこんだ。やっぱり何か起こる人には起こるんだな、と少し焦るが、私はなんともなく、15分後、無事帰途についた。

翌朝、注射されたあたりがとても痛くて腕が上がらないが、それ以外は普通に元気に目がさめた。だが接種からちょうど24時間経った頃から、なんだか頭がふわふわし始めた。インフルエンザで高熱が出たのを解熱剤で無理やり下げている、そんな感じに似ただるさと力の入らない感じが丸2日間続き、そしてそれも消えた。

屋外でのマスク着用義務が解除される

6月に入り、真夏のような気温が続いている最近のイタリアで、ついに6月28日からは屋外でのマスク着用義務が解除されることになった(ただし密が発生する場所では屋外でも引き続きマスク着用義務)。

暑い時期のマスクはつらい。特に、もともとマスクをする習慣のない欧米人たちがマスクを早く外したいと思う気持ちは理解できるが、ワクチンを済ませてもすぐにマスクを外してはダメ、と専門家たちが口を酸っぱくして言っていたのを思い出す。ワクチンは発症と重症化を防ぐが、感染を防ぐかどうかははっきりわかっていない。他人に感染させることはありうるし、そもそも発症を防ぐのも100%ではないからと言っていたはずだ。今、増えつつあるデルタ変異株(インド株)に至ってはファイザーで79%、アストラゼネカなら60%まで効果が下がってしまうという(イルジョルノ紙)。

せっかくワクチン接種を受けたのに、ちょっと先を急いだせいで再びパンデミック再燃なんて、絶対やめてほしい。

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