太平洋の真ん中でエンジン停止したらどうなるか そのときパイロットはどんな操作を行うか

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安全な航行の裏で、知られざるパイロットの仕事を紹介(写真:やえざくら/PIXTA)
旅行や出張でジェット旅客機に乗客として乗ったことがある人は多いでしょう。そのとき、「パイロットは何をしているんだろう」「どうやって安全に飛ばすんだろう?」「緊急のトラブルが起きたらどうするんだろう?」「オートパイロットにしたら、着陸まで何もしないのか?」などと疑問に思ったことはありませんか?
今回は「太平洋の真ん中でエンジンが停止したらどうする?」というちょっと怖いテーマを、元航空機関士の中村寛治さんに教えてもらいましょう。
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巡航中にエンジン故障が発生した場合にパイロットはどのような操作を実施しているのか考えてみましょう。

エンジンに不具合が起きたときのパイロットの行動は?

多量の燃料を搭載している国際線の飛行機は重いため、高い高度を巡航していると、残りのエンジン推力では空気抵抗に打ち勝つことができません。そのまま高度を維持していると急激に減速してしまい失速する恐れが大きくなります。

そのため、残りのエンジンだけで十分な推力が得られる、空気が濃くなる高度まで速やかに降下する必要があります。

エンジン不作動時のスタンダードな降下方式は、残りのエンジンを最大連続推力にセットし、滑空比(沈下距離に対する進出距離の比)が最大となる速度で進出距離を稼ぎながら降下するドリフト・ダウンと呼ばれる方式です。降下する間には、

・ATC(航空交通管制)に緊急事態を通報し、着陸予定空港までの飛行ルートおよび巡航高度を要求
・着陸予定空港までの飛行ルートをFMS(飛行管理システム)に入力し確認
・APU(補助動力装置)の作動確認
・必要なチェックリストの実施
・残燃料の確認
・エンジン故障にともなう他のシステムへの影響を確認
・客室乗務員に緊急事態の説明および客室の状況確認
・余裕があれば機長から客室へアナウンス

など、優先順位を決めて実施していきます。

なお、空気の濃い高度まで達するとエンジンの状況によっては再スタートが可能となる場合があります。例えば、燃料制御装置の一時的な故障により、燃料が一瞬途絶えたことが原因でエンジン停止することも考えられます。このような一時的な停止と判断できる場合には、再スタートを試みることがあります。その昔、火山灰を吸い込んだことが原因で全エンジンが停止してしまいましたが、再スタートを何度も試みたことにより復旧に成功し、無事に着陸した事例もあります。

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