乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ

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旅客機の下部には航空貨物が積まれている(筆者撮影)

新型コロナウイルス感染症拡大の影響が世界的に広がっている。鉄道でも旅客数が激減しているが、貨物列車はJR貨物の4月輸送実績は前年同月比90.3%と、減ってはいるものの、旅客数の落ち込みほどではない。

新幹線など国内の長距離列車は青息吐息だが、貨物列車はそれなりに動いている。航空では多くの路線が運休となる中、北米や中国行きを中心にいつも通りに飛んでいる国際旅客便もある。運休にならない理由は、旅客便には航空貨物を運ぶという役割もあるためだ。多くの旅客便が運休になっていることから、飛んでいる便へ貨物が集中し、需要増で貨物運賃が高騰すらしているという。

われわれが思っている以上に旅客便は航空貨物を運んでいる。とくにワイドボディ機(客室通路が2列ある機体)は大きな貨物輸送能力を持っている。世界の航空貨物のうち、約半分が貨物専用便で運ばれ、残り半分は旅客便の床下で運ばれている。貨物専用便のほうが多くの貨物が運べるが、旅客便は便数が多いのでこのような結果になる。

その旅客便が運休になったことで、貨物が滞ってしまうのだ。そのため貨物専用便による臨時便を運航したり、旅客機に貨物だけ載せて運航したりしている。旅客便は貨物も運ぶことで成り立っていたので、旅客がいないからといって簡単に運休にできない路線も多いのだ。

旅客がいなければもっと運べる

それでは旅客機の床下にどのくらいの貨物スペースがあるだろうか。旅客機の床下中央は主翼であり燃料タンクで、機首側には前脚(前の車輪)が収納されているが、それ以外は貨物スペースである。

同じ大きさのボーイング777-200(旅客機)と777-200F(貨物機)を貨物室の容積で比べると、旅客機の床下に150㎥、貨物機は機体全体が貨物室なので653㎥の大きさがある。貨物機は旅客機の4倍の容積があり、圧倒的な輸送力があるように思える。

しかし、話は単純ではない。貨物機に653㎥の大きさがあるといっても、重い貨物を満杯にすることは通常できない。そんなことをしたら、貨物だけで最大離陸重量になり、燃料をほとんど積めなくなってしまう。成田から関空まで飛ぶ程度なら可能だが。

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