乗客ゼロの旅客機が担う「知られざる重要任務」 平時でも、航空貨物の半分は旅客機が運ぶ

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ではどうするか。貨物専用便は重くて小さいものと軽くて大きいものをうまく組み合わせることで、重さ、容積をバランスさせることでアンカレッジまで飛べるくらいの燃料の重さを捻出し、機体性能を目一杯使って飛んでいる。

貨物専用機「ボーイング747-400F](写真:時事)

旅客機は150㎥の貨物スペースしかないものの、旅客や手荷物がなければ、貨物スペースは重い貨物で満杯にすることも可能だ。客室にマスクの入った段ボールを載せる映像もあったが、好んで客室に載せるはずはないので、少なくともその便の床下は貨物で満杯なのである。

日本航空は貨物専用便を運航していたが、破綻を機に運航を取りやめた。旅客便の床下だけでも多くの貨物が運べるというのが専用便撤退の大きな理由だ。逆にいえば、貨物専用便を運航している航空会社は、特大貨物を運べることが強みとなる。またボーイング747貨物機を運航している場合は、機首部の貨物ドアが開くので、長大物も運べる。

航空貨物の中身は?

そもそも国際航空貨物として運ばれるものはどのようなものなのか。航空貨物は「速さ」がメリットで、通関も含めて船で1カ月かかるところを2~3日で運ぶ。しかし、運賃は船便の10倍くらいとなる。航空貨物向きなのは小さく軽く高価なもの、具体的には電子機器などである。

いっぽう、食料品は高級ワインなどを除くと船で運ぶのが主流で、航空便が使われるケースは減っている。なぜ減っているかというと、冷凍方法など輸送技術の進歩で、船便でも品質が損なわれることなく運べるようになったためだ。

需要形態にも特徴がある。旅客は気候や世界情勢などで需要が増減するが、貨物需要は安定していることが多い。日本、北米、中国などでたとえれば、アメリカに自動車生産ラインがあり、日本でパーツを、さらにそのパーツの部品を中国で生産していれば、航空貨物便はそれらを運ぶベルトコンベアーの役割を果たす。どこも在庫を多く持つことはしないので、航空貨物便が滞ると全体の流れに対する影響は大きい。いわば航空会社にとって貨物は、定期券で利用しているような需要になる。

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