NYダウや日経平均はこのまま下落してしまうのか FOMC後の「市場の動揺」をどう考えればいいのか

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さらに一段と目を引くのは、国際商品市況の下落だ。原油価格は小幅軟化したものの大きくは動いていないが、一方で銅先物価格(COMEX)は終値ベースで5月11日の高値である1ポンド=4.76ドルから14日には4.53ドルにじわりと軟化していたものが、一気に下落スピードが加速し、先週末は4.12ドルとなっている。その他の原材料などでも、下げが大きいものが目立つ。

とくに木材価格は、先物で1000ボードフィート当たり、今年2~3月は800~1000ドルを中心とした推移であったものが、5月10日には一時1700ドルを超えて、「ウッドショック」と呼ばれた。

ちなみに、1ボードフィートは、厚さが1インチ(1インチは2.54センチメートル)、縦横が各1フィート(1フィートは12インチ、30.48センチメートル)の木材の板を表す。こうした木材価格の高騰が住宅価格を押し上げ、住宅への需要を減退させるとの懸念が広がっていたが、その後、木材価格は下落に転じ、先週末は900.80ドルで引けている。

こうした、先週木曜日から金曜日に顕著になった、景気敏感株売り、長期金利低下、それと少し前から進んではいたが国際商品市況の下落を眺めると、市場は「連銀の利上げでアメリカの経済は悪化するので、株式は売られ長期金利は低下し、デフレになる」と叫び始めたかのようだ。

そもそもFOMCの金利見通し修正に「騒ぎすぎ」

しかし、そうした市場の反応は的確なものなのだろうか。FOMCの2日目までは、「アメリカの景気は過熱している。だから連銀も利上げを早めるのだ。長期金利の上昇とインフレが心配だ。株価は全般に売り込まれるだろう」と騒いでいたはずだ。

その市場が、その翌日から「連銀が利上げをしたら、アメリカの景気は悪化してしまう。長期金利は低下するし、国際商品市況を含め物価は低下する。景気敏感株は売りだ!」と騒いでいるわけだ。たったの1日で、アメリカの経済は好況から不況に転落したのだろうか。そんなはずはあるまい。

とすれば、こうしたさまざまな市場の動きをどう解釈すればよいのか。それは「市場心理の不安定さから、さまざまな材料や思惑に投資家が飛びつき、ドタバタと方向感もなく売買しているだけだ」と考えるべきだろう。したがって、こうした動揺は早晩一巡し、アメリカの株価は(つれて日本株も)再度緩やかな上昇基調に復すると見込む。

こうした先週の市場のドタバタを横に置いても、市場の材料となった、FOMCメンバーたちの金利見通しの上方修正そのものも、もちろん今年中に政策金利が上がるという話ではない。さらには来年2022年のことでもなく、2023年と、かなり先のことだ。

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