NYダウや日経平均はこのまま下落してしまうのか FOMC後の「市場の動揺」をどう考えればいいのか

拡大
縮小

加えて、FOMC前から、民間のエコノミスト・マーケットアナリストの間では、もっと早い利上げを見込んでいた向きが多かったと考えられる。つまり、テーパリング(量的緩和の縮小)を将来始めるとの声明が今年末までに行われ、テーパリングの実施はぎりぎり今年末近くか来年前半、利上げは来年後半あたり、との観測が主流だった。

そうした市場における金融政策の見通しに比べ、はるかに早い時期に利上げする可能性があるとの見解を連銀が披露したならともかく、市場が想定していた利上げスケジュールより遅い、ということなのだから、ますます市場が大げさに騒ぎすぎているとの感が強い。

物色は「あざなえる縄の如し」

株価指数で考えた市場動向は述べた通りで、今週日米の株価がさらに下振れするようであれば、押し目買いの好機だと考える。ただ、物色動向を見ると、別の観点も見えてくる。

前述のアメリカの長期金利上昇騒ぎのところで述べたように、昨年来優勢を続けた成長株、あるいはIT関連株、ナスダック総合指数、SOX指数といったところは、2月半ばでいったんピークをつけた。その後はナスダックやSOXそのものは高値を再奪回した局面もあったが、物色の主流はバリュー株、景気敏感株に移行した。

そのため、ナスダック総合指数をS&P500で割った相対指数を見ると、週平均値ベースでは3.58倍でピーク(2月8~12日の週)を打ち、3.22倍まで低下した(5月10~14日の週)。またSOX÷S&P500の比率では、2月15~19日の週の0.82倍がピークとなり、5月10~14日の週は0.70倍にまで下がった。

しかしそれ以降は、逆にバリュー株、景気敏感株から、IT成長株への巻き戻しが生じ、述べたような2つの相対指数は上昇に転じている。

こうした見解に立てば、先週末にかけて顕著になった景気敏感株への売りとNYダウ工業株指数の大きな下落は、FOMCとは関係なく、「編んだ縄」のように物色が入れ替わっている結果だと解釈できる。

今後も、あちらが買われたりこちらが買われたり、という物色の入れ替わりが生じ、全体平均としての主要な株価指数は、短期的には上下に振れながらも、極めて緩やかな上昇基調をたどる、という展開になりそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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