「ゴルフ8」試乗!電動化に突き進むVWの現在地 伝統の「ゴルフらしさ」とデジタル化のバランス

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1.0リッターの3気筒エンジンは、やはり始動時にブルブルという振動を感じさせる。ただし、街乗りなどの低~中速域では、1.0リッターと1.5リッターのパワーの差は、それほど感じることはなかった。1.0リッターでも十分なのだ。ただし、高速道路を走ると当然、1.5リッターに軍配が上がる。

1.5リッターを搭載する上級モデルの「eTSI Style」(筆者撮影)

さらに速度が上がると、また別のゴルフ8の魅力が見えてきた。非常に安定しており、安心感が高い。もちろん愚鈍ではなく、思いのままに車線変更も行えるし、そこで姿勢が乱れることもない。さらに空力がCd値0.275と優れているので、風切り音も小さい。

こうした高速走行こそ、ドイツ車、そしてゴルフの最も得意なシーンだろう。高速道路の走りは「さすが!」と思わせるレベルの高さであった。

飛び道具はなくとも磨きこまれた魅力を認識

ゴルフ8で目新しく導入されたのは、デジタルコクピットや48Vマイルドハイブリッドが主となる。しかし、こうした技術はそれほど新しいものではないし、中身となるプラットフォームやエンジンは旧来のものを継続利用している。そういう意味では、たしかに目玉となるような飛び道具的な技術やアイテムはない。

しかし、走らせてみればゴルフ8の走りは一級品であった。デジタルコクピットも新しさだけではなく、「使いやすい」という印象だ。つまり、ゴルフ8は外連味のない、磨きこまれた良い製品であったといえる。

新型モデルについ新しい技術や機能を求めてしまうのは、メディアならではの習性だろう。しかし、最も重要なことは、良い製品であることだ。そうした原点を外さないのもゴルフの伝統だろう。オーソドックスかもしれないが、良いクルマ。だからこそ、2020年のヨーロッパ市場で、ゴルフ8はベストセラーカーになっている。

ただし、6~8年後に登場するであろう次の世代、ゴルフ9はどうなるだろうか。電動化の果てにEVの「ID.3」にとって代わられてしまう可能性もある。

フォルクスワーゲンは「ID」の名でEVブランドを展開する(写真:volkswagen)

逆にエンジン搭載のハイブリッドのまま、命脈を保てているかもしれない。

どちらになるのかはマーケットが決めるもの。次世代ゴルフをEVにしたいのであれば、ピュアなEVであるID.3を待てばいい。内燃機関にこだわりのある人は、伝統のスポーツモデルである「GTI」を買うのがいいだろう。次世代のゴルフの姿を決めるのはユーザーであり、その投票券は新車購入であるからだ。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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