この喫緊かつ複雑な電力問題に、モディ首相は本腰を入れています。電力改革は新政権のトップアジェンダのひとつといって良いでしょう。まず関係省庁の連携を向上するために省庁再編に着手しました。具体的には石炭省と電力省、再生可能エネルギー省の関連3省の統合で、実現すれば包括的な電力政策の策定が可能になります。就任直後の5月には、3省に単一の大臣(ピユシュ・ゴヤル氏)を任命し、統合への布石を打ちました。また2014年度の予算案では、電力部門に大きな予算を割り当てています。
商機は100カ所のスマートシティ
ではインドの電力セクターは、外資企業にとっては魅力的な分野でしょうか。答えはイエスです。モディ首相はこの分野への投資環境の改善に積極的です。
インドは国有企業がほぼ独占してきた電力部門を、30年以上をかけて外資を含む民間企業に開放してきました。現在は、発電(原子力を除く)、配電、送電や電力取引などの事業領域で、外国直接投資(FDI)が自動認可されています。電力セクターへの外資参入の波は1990年代に一度起こっています。新政府が発足したことで第2の参入の波が起こるのではないでしょうか。
特にスマートシティは、日本企業にとって大きな商機になりそうです。1月の選挙演説の中で、モディ氏はスマートシティを国家的ビジョンの一環として開発すると約束しました。国内100カ所に新設する計画です。この計画が進めば、スマート・グリッド・オートメーションやスマートメーター管理などの関連技術に長けた日本企業にはチャンスです。
また地域ごとにみると、ウッタル・プラデシュやオディシャ、マディヤ・プラデシュといった州では天然ガスの豊富な地域ではガス火力発電、ビハールやジャルカンド、西ベンガル、チャディーガル、アンドラ・プラデシュといった石炭が豊富な州では石炭火力発電が推進されます。
新エネルギー関連でも、タール砂漠のあるラジャスタン州やグジャラート州など日射量が豊富な土地では太陽光発電、風力発電はタミル・ナドゥ、ケララ州で育成される見通しです。バイオマス発電は全土で進められることになります。言い換えれば、インドのあらゆる地域に日本企業のビジネスチャンスがあふれているのです。
参入形態ですが、電力セクターでは100%外資による投資が認められてはいますが、これまでの実績では日本企業は独資での進出を好みません。官民協力(PPP)の形態での参入が日本企業に合っているといえるでしょう。多くの大型電力プロジェクトで官民協力による参入が可能となっています。
国内メディアはこぞって、モディ政権が22年までにインドをエネルギー効率の優れた国にするという構想を報じています。同年はインドの独立75周年という節目。その年にもし、全ての人々が電気を利用できるようになっていれば、インドは国家として成熟したと言えるでしょう。この目標達成の鍵を握るのはモディ政権です。
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