中国との付き合い方、ベトナムに学べ! 武部勤氏が説く「挑発に乗らない知恵」
武部 実は安倍(晋三)首相が二度目の首相に就任する前に、「政権に復帰することがあれば、是非ともベトナムとモンゴルを訪問してほしい」と手紙を書いたことがあったのです。実際に安倍首相は、首相に就任してすぐの2013年1月にベトナムを訪問され、3月にモンゴルを訪問されました。首相がアジアを重視される姿勢は誠に喜ばしいと思っていますよ。
そもそも私がベトナムを重要な国だと思ったのは、秘書としてお仕えした故・渡辺美智雄先生の影響です。渡辺先生は「インドシナ半島の民生が向上すると、アジアの平和と世界の繁栄に繋がる。ベトナムはアジアの大国だ」と言っておられたからです。
確かに9000万人の人口を持ち、石油や石炭、天然ガスなどエネルギー資源に恵まれているベトナムは潜在的な大国といえるでしょう。33万平方キロメートルの国土は日本よりやや小さいですが、南北に長い海岸線を持つという点で日本と共通していますね。
何度も侵略を受けてきたベトナム
――中国という隣国を持つという点でも、日本とベトナムは共通しています。
武部 同じ隣国を持っていても、海を隔てている日本とは異なり、中国と陸続きのベトナムは何度も侵略を受けてきました。中国はベトナムが豊かになり、大きくなろうとすると叩いてきました。ベトナム戦争でも、中国はいちおうベトナムを支援したことになっていますが、早期終結を求めていたわけではありませんでした。なるべくベトナムの国力が弱まるように導いていく―それ中国が昔からやってきたやり方で、これこそ中華思想なのです。
中国は簡単に自分の姿勢を変えることはありません。よってベトナムの歴史とは、こうした中国に抵抗し続けた歴史といえるものでした。中国から1000年もの支配を受けたため、科挙制度や漢字など中国の影響が強い制度もありました。こうしてベトナム人のDNAには、容易に解消できない中国への警戒感がしっかりと刻まれているのです。
そうした経験があるからでしょう、ベトナムは外交がとても上手です。ベトナム戦争でも、国際社会を味方につけて終結に導きました。今回の中国によるパラセル諸島近海での侵奪についても、国際世論をうまく導いていくに違いありません。中国船は何度もベトナムを挑発していますが、これはベトナム海軍の軍艦の出動を狙っていたという話があります。中国にすれば、1979年の中越戦争でやられたという痛い記憶がいまだあるものの、海に出れば勝てると踏んだのかもしれません。しかしベトナムはそれに安易に乗りませんでした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら