モディ政権は、140万人以上の従業員を抱える国営企業、「インド鉄道(以下、インド国鉄)」の改革に取り掛かろうとしています。ガウダー・ゴーダ鉄道相は6月25日から旅客運賃を約15%、貨物運賃を約6%値上げしました。これにより600億ルピー近くの収入増につながる見通しで、年間260億ルピーにもなる旅客輸送部門の赤字を解消することを目指します。
今回はインドの鉄道事業において、日本企業がどのような可能性を掴めるかについて考えていきます。
言うまでもないことですが、先進国では優れた交通網の存在が経済発展の重要な役割を担っており、交通インフラ次第で、その国の経済が発展することもあれば、停滞することもあります。発展途上国であるインドにおいて、インド国鉄は、インドの全域、ほぼ全ての州を一つの鉄道でつなぎ、一つの国としてまとめたことに功績があり、その点で国家の統一に大きな貢献をしてきました。
1500キロの移動がわずか500円
インド国鉄はインド市民の足として重要な役割を果たすと同時に、物流手段としても重要なインフラとなっています。インド国鉄の1日当たりの輸送人員は2500万人以上、年間では72億人です。1日当たりの運行列車本数は1万9000本、うち1万2000本が旅客用で、7000本が貨物列車となっています。駅の数は7083。運賃は世界でも最も安く、長距離列車でも二等車ならば1500kmを300ルピーで移動できます。300ルピーは日本円にすれば500円。1500kmは東京から鹿児島までの距離に相当するので、いかに安価に移動できるかがわかると思います。多少の値上げがあっても、その安さは世界一と言っていいでしょう。
インドの鉄道は宗主国の英国が1853年に導入して以来160年にわたる長い歴史があります。独立以前、インドには40以上の鉄道会社がありましたが、1951年に国有化され、インド国鉄1社になりました。そのため、インド国鉄は28州と7直轄地をカバーし、国内数カ所に機関車と貨車の生産工場を保有しています。従業員数は140万人以上。しかし、数多くの鉄道会社を統合したため、レールのゲージ幅が統一されていないなど、さまざまな問題を抱えており、鉄道の延伸がなかなか進みませんでした。さらにその運営は政策不在。非効率的経営が長い間続いてきました。
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