絶体絶命の鳩山首相が小渕元首相から見習うべきこと

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絶体絶命の鳩山首相が小渕元首相から見習うべきこと

塩田潮

 普天間問題で鳩山首相は独り相撲を取って勝手に転倒した。この失態は致命的だ。政治リーター失格の烙印は重い。政権交代を実現した民主党で本格首相登場までのつなぎ役というのが「創業者」の鳩山氏の役割だったとすれば、賞味期限切れは近いかもしれない。

 過去によく似たタイプの首相がいた。10年前の小渕元首相だ。登場時の凡庸・軽量イメージ、温和な人柄と敵の少なさ、「低い重心」などが共通している。
 二人は「この人だけ」という記録を持つ。
 小渕氏は自民党の首相で唯一の副総裁経験者、鳩山氏は共同代表時代を含め3度の党首経験があるが、ともにまとまりのよさを表している。小渕氏は「冷えたピザ」「真空総理」とからかわれたが、鳩山首相は「愚かな首相」「学んで抑止力を知った」と自ら口にする。腰高と反対の「低い重心」が持ち味といっていい。
 違いはどこか。小渕内閣の官房副長官だった鈴木宗男氏は「フォア・ザ・チームの形ができていない」と鳩山政権のスタッフを問題にする。弱体だから支えなければと周りをその気にさせた小渕氏に対して、希薄な人間関係の鳩山氏は、振り向けばみんな遠巻きという感がある。

 小渕内閣は支持率20%台からはい上がった数少ない政権だが、当初は参議院少数与党、与党内の政敵も健在で、綱渡りの政権運営を強いられた。ゼロからの発想で、恥も外聞も棄て「なんでもあり」で挑戦した。「低い重心」の首相には可能だった。自ら「世界の借金王」と自嘲するほど、財政赤字を膨らませた。その罪は重いが、支持は拡大した。

 絶体絶命の鳩山首相が見習うとすれば、同じように「低い重心」を生かして、一度、発想をリセットし、ゼロから再出発を図ることではないか。
 つなぎ役でなく、民主党政権の初代首相という歴史的使命を思い起こし、捨て身で挑むしかない。カギは自己変革力だろう。問題は国民が再チャレンジのチャンスを与えるかどうかだが、道は険しい。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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