芸術分野で起こりがち「極端な所得差」生む背景 ほぼ同じ能力でも差が出るスーパースター現象
「スーパースター現象」とは何か
レコードに始まりYouTubeによる鑑賞に至るまで、再生技術と複製技術は長足の進歩を遂げ、芸術作品の「受け手」の鑑賞スタイルも変化してきた。聴衆が通う大ホールでの演奏会だけでなく、独りで自分の部屋に閉じこもって演奏を楽しむというスタイルも常態化した。
さらに複製技術によって量産体制に入った音楽産業界は、数々の「スーパースター」を生み出し、芸術家の間の所得格差を拡大させたことを経済学の研究は示している。
一部の「スーパースター」と呼ばれる演奏家が、多額の報酬を得、そのほかの芸術家は低所得に苦しむという、所得分配の大きな歪みが一般に指摘されてきた。
例えば抜群の人気を誇る少数の指揮者の演奏会のチケットやCD・DVDは爆発的に売れる。そこまで「能力」の差があるとは思えない他の指揮者の演奏会のチケットやCD・DVDの売れ行きとの間に極端な「格差」が生まれる。
こうした現象を経済学の論理だけで説明するのは簡単ではない。ひとつの有効な回答を与えたのは、経済学者シャーウィン・ローゼンの論文、“The Economics of Superstars”(1981)である。
ローゼンが注目したのは、芸能・芸術の世界のごく少数のアーティストが巨額の所得を稼得しその活動分野を支配するという、現代社会で目立つ「スーパースター現象」である。一部の人たちに「生産」(演奏や上演)が集中し、アーティスト間の所得分配が目立って歪み、トップ層のみが膨大な所得を得ていることだ。
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