BTS×キシリトール、タッグを組む意外な理由 「世界を笑顔にする」ナラティブ(物語)の紡ぎ方

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さて、一方のロッテはどうだろうか。ロッテでは、「食と健康」「環境」など5つの目標領域を「ESG中期目標」として設定しており、2020年に、「歯と口の健康のためにキシリトールを生活に取り入れている人の割合(国内)」という項目を追加した。具体的には、現状の32%を2028年までに50%に引き上げようという計画だ。

ロッテからキシリトールガムが発売されたのは1997年。20年以上を経て、そのブランド認知度はおよそ90%と、「日本人ならほぼ誰もが知っている」レベルだと言えよう。ところが、素材としてのキシリトールの具体的な機能を理解している人は30%に満たない。つまり、「知ってはいるけれど、具体的な虫歯予防の機能はもうひとつわかっていない」人が多いというわけだ。このため、ロッテは2018年より、『その歯と100年。キシリトール。』のスローガンのもと社会啓発を進めていた。

こうした背景が、2020年10月に発表された「その歯と100年。キシリトールプロジェクト」の発足につながる。「むし歯のない社会へ。」を自治体と共創していこう、というのがその趣旨で、まずは福島県会津若松市の10カ所の保育園・幼稚園にキシリトール入りタブレットとサーバーの提供を開始した。「スマートシティ会津若松」を推進している同市ならではの、市民のオプトインデータの活用なども検討される。同様の取り組みを、2023年までに全国10自治体に広める計画だ。

プロジェクトの展開にあたって、ロッテ社内ではナラティブスクリプトが検討された。この取り組みは、まさに企業、自治体、医療従事者、生活者(市民)の「共創構造」がカギになる。そのためには、プロジェクトを社会的なナラティブとして捉え、しっかりと合意しておく必要がある。

ベンチマークすべきはフィンランド

キシリトールの「故郷」であるフィンランドのSDGs達成度は世界でも群を抜いており、歯の健康のためのキシリトール摂取率はなんと94%。その背後には、企業と地域社会が連携する共創構造があり、日本はそれをベンチマークすべきという大局的な課題設定があるべきだ。

そして重要なのが、ロッテの自分らしさ(オーセンティシティ)だ。「なぜ、それをロッテがやるのか?」という問いへの答えもスクリプトの中では明確にする。そして、誰をどのように巻き込んで、物語的な共創構造が進むのか、という将来仮説。このナラティブスクリプトが、中長期的に続くプロジェクトの指針となる。

プロジェクトの発足は好意的に報道され、協業に強い関心を示す自治体も現れた。また、導入が開始された会津若松市のスーパーでは、キシリトールの売り上げが2桁以上(前年比110%)上昇を示すなどマーケティングの側面での成果も見え始めた。

次ページBTSとロッテをつなぐSDGsのナラティブ
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事