BTS×キシリトール、タッグを組む意外な理由 「世界を笑顔にする」ナラティブ(物語)の紡ぎ方
ナラティブとは、「物語的な共創構造」だ。企業やブランドが一方的に自らのストーリーを語るのではなく、パーパス(存在意義)にもとづく物語が、生活者をはじめとするステークホルダー(利害関係者)との共創によって、現在進行形で続いていく。つまりナラティブとは社会における集合的なストーリーであり、企業が生活者と「紡いでいく」ものなのである。
BTSがファンと紡ぐナラティブ
「あなたのストーリーを聞かせてください」――ユニセフ(国連児童基金)本部でのスピーチで、BTSのリーダーである「RM」はそう世界中の若者に呼びかけた。RMはスピーチの中で、ソウル近郊の小さな町で生まれた自分自身のストーリーも語りながら、自分を愛することが大事で、それは自分のストーリーを語ることから始まるのだと訴えた。
これは、『LOVE MYSELF(私自身をまず愛そう)』というユニセフとBTSの共同キャンペーンの一環だが、このRMの発言にも象徴されるように、BTSと世界中のファンの関係性は非常に「ナラティブ」である。BTSには「ARMY」と呼ばれるファン組織があるが、BTSの活動を注意深く眺めると、そこには随所にファンの参画構造が見てとれる。まさに、BTSとファンは同じ物語を共有しているのだ。
「BTSがファンと紡いでいるのは、『自分の内面とその成長』というナラティブだと思います」。自身も「ARMY」を名乗る、筋金入りのBTSファンであるマーケティングコンサルタントの川村美子氏はそう言う。「BTSには、ファンが一緒に価値共有できるテーマがあります。そして、決してアーティストからの一方通行ではない、参画の余白のようなものがあるのです。言ってみれば、アーティストとしての活動の中に、ファンが組み込まれている。アーティストをフォローする存在や統制する対象としてのファンではなく、お互いにBTSの物語を共創している、という感覚かもしれません」。
例えば、「Weverse(ウィバース)」と呼ばれるBTSとファンの交流プラットフォームがある。そこにBTSメンバーの投稿があがるや、なんと数秒足らずで、多言語を操るARMY(BTSのファン)がさまざまな言語に翻訳してTwitterにアップ。それが瞬く間に拡散するのだ。実質的なファンクラブである「ARMY」には独自のロゴもあり、固有のアイデンティティーを有している。ここには、音楽という作品を「提供」するアーティストと、それを「消費」するファンという関係性を超えた、ナラティブ(物語的な共創構造)が生まれている。
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