愛知県西尾市、泥沼化した「PFI事業見直し」の行方 4年前から協議進まず再び選挙へ突入のワケ

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「そもそも自治体が法律に違反する行為を行うことを地方自治法などの法律では全く想定していない。法治国家としての大前提が崩れる問題だ」と、重徳議員は危機感をあらわにする。

すでに昨年春に判決確定した損賠賠償請求訴訟でSPCが勝訴し、司法の場でシロクロがはっきりしつつある。過去20年間に全国で実施されたPFI事業のうち7件が契約解除となっているが、2件がSPCの経営破綻、残りもSPCの事業採算悪化などで双方が合意したもので、行政側の事情で契約解除となったものは前例がない。

今後、西尾市のPFI事業が任意解除となった場合、損害賠償額はいくらになるのか――。中村市長は、筆者の質問状に対して「現時点では合意が得られない解除ということは考えていません」という。その一方で損害賠償額は「裁判の中で双方が立証し合うことで裁判所が決定するものであるため、現時点でその金額を大きくクローズアップすることが適切とは思えません」と回答し、訴訟も視野に入れていることを匂わせている。

対立候補の菅沼氏が懸念する200億円規模の損害賠償請求訴訟となれば、裁判の長期化は避けられないだろう。

情報公開を拒む西尾市

SPCでは当初から「契約解除するのは簡単だが、支払われる損害賠償金は西尾市民である自分たちの税金だ。法律と契約に基づいて合理的な解決を図りたい」と主張し、情報をオープンにして市民の理解を求めてきた。

これに対して、2019年春に申し立てた民事調停を理由に情報公開を拒み続けているのは西尾市のほうで、重徳議員も「民間事業者との協議内容について自治体側が情報公開しないのは問題だ」と指摘している。

3年前に『週刊東洋経済』に掲載した記事「業界期待のPFIに暗い影 契約後に相次ぐ契約見直し」で、西尾市のほか茨城県神栖市、福岡県行橋市の事例を取り上げた。

その後、神栖市では計画見直しによるVFMを算定した結果、見直しは行わずに事業を継続。反対運動が起きていた行橋市の図書館複合施設も2020年4月に供用開始されている。

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