愛知県西尾市、泥沼化した「PFI事業見直し」の行方 4年前から協議進まず再び選挙へ突入のワケ

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選挙後の記者会見で、中村市長は「PFIは時代の流れであり、今後も積極的に取り組んでいく必要がある」と述べる一方で、西尾市が導入した「サービスプロバイダー方式」に問題があるとの認識を示していた。

2018年3月にまとめたPFI見直し方針は、公共施設の新設・改修で規模の大きな工事ばかりをPFI事業の対象から外し、160施設の施設管理などを残すという内容だった。

PFI見直しをめぐる協議は泥沼化

PFIでは、発注者側の事情で契約を打ち切る「任意解除」が認められている。国が定めるPFIガイドラインにも明記されており、選挙などで民意に変化が起きれば、大幅な契約変更や任意解除は十分に想定されることだ。その場合、双方で協議して民間事業者に相応の損害賠償金を支払う必要がある。

西尾市が示したPFI見直しは、198億円のうち93億円を占める施設整備のほぼ半分を削減する大幅な契約変更で、対象工事を行うためにSPCに出資・参画していた一部の企業にとっては事実上の契約解除となる。これを西尾市では契約書に付随する「業務要求水準書」の変更通知で済ませようとしたことからSPC側が反発した。

PFIでは、従来型公共事業として実施する場合とPFI事業で実施する場合を比較してVFMを算定することが義務づけられている。契約変更になった場合もVFMを算定し直す必要があるが、業務要求水準書の変更とすることで、西尾市では見直し後のVFM算定を行っていない。

内閣府の民間資金等活用事業推進室(PPP/PFI推進室)では「一般論として業務要求水準書の変更で、PFI契約の変更はできない」との見解を示してきた。しかし、西尾市では、国の見解は一般論であり、西尾市には当てはまらないとして見直しを強行。双方の協議は泥沼化するなかで、PFI対象の解体工事を合意なしに別の企業に発注し、二重契約問題で国家賠償請求訴訟が起こされるなど、西尾市はPFI関連で7件の訴訟(1件は確定)が提起されている。

西尾市PFI見直し問題は、今年2月に国会でも取り上げられた。地元選出の重徳和彦衆議院議員は「法律上、契約上も想定されていない状態が続けば、自治体による前代未聞の債務不履行に陥らざるをえない」として国に適切な対応を求めた。河野太郎国務大臣も「状況を確認する」と答弁し、PPP/PFI推進室も「双方から事情を聞くなど調査を進めている」という。

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