愛知県西尾市、泥沼化した「PFI事業見直し」の行方 4年前から協議進まず再び選挙へ突入のワケ
4年前の首長選挙で最大の争点となったPFI(民間資金活用型公共事業)見直しがほとんど進展しないまま、再び選挙へと突入する地方自治体がある。あの新型コロナウイルスのワクチン接種便宜問題で話題となった愛知県西尾市だ。
前回(2017年6月)の選挙では、その1年前に地元企業で構成されたSPC(特定目的会社)と契約してスタートしていた総額約198億円のPFI事業の見直しを訴えた中村健氏が当選。市長就任後、すでに始まっていた工事を中断させ、SPCに事業見直しを迫った。
その話し合いが進まないまま、4年が経過。今月下旬に行われる市長選挙に、現職市長の中村氏は「PFIの契約解除」という強硬手段も辞さないことを表明して立候補した。
対立候補として出馬表明した西尾市元職員の菅沼賢次氏は、中村市政によるPFI見直しで国家賠償請求訴訟など7件もの訴訟が提起されていると批判。「このまま(契約解除)では訴訟額は200億円規模、市民1人当たり10万円超の負担になる」と訴える。
果たして泥沼化したPFI見直し問題を解決できるリーダーは誰か――。再び西尾市民の判断に委ねられることになった。
国が推進する「PFI事業」とは
PFI事業は、1999年に制定されたPFI法に基づき導入され、日本でも20年以上の歴史がある。国や地方の財政状況が厳しくなるなかで、民間資金を活用して公共施設の整備などを行い、公共サービスの維持・向上を図るとともに、民間の創意工夫によってVFM(バリュー・フォー・マネー:投資効果)を改善し、事業全体のライフサイクルコストを下げることを目的としている。
当時、公共事業分野では建設談合問題が相次いで表面化し、入札制度改革などの取り組みが国主導で進められていた。一方、地方では公共事業で権益を得てきた地方議員や役所職員、建設談合組織が根強く残っていたため、PFIも民間資金だけを使って工事発注や運営は従来の公共事業と同じ方式で進める自治体がほとんどだった。これでは単なる税金の後払いにすぎず、地方財政改革にならないため財務省がブレーキをかけてきた経緯がある。
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