5大商社の狭き門くぐる「求められる人材」の条件 6月1日に面接解禁、熾烈な人材獲得戦争の裏側

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商社を取り巻く環境が変わる中でも、いわゆる「求める人材像」に大きな変化はないと言うのが三菱商事だ。同社で採用チームリーダーを務める田中裕美氏は、「三菱商事は(将来の)経営人材として自律的に成長できる人材を求めている。そのために必要なのが事業構想力と実行力、高い倫理観。そのポテンシャルがあるかどうか、経験の派手さではなく、本質的な部分を面接で掘り下げて質問していきたい」と話す。

三井物産が重視するのは、「昨年改訂した経営理念のMission、Vision、Valuesに沿って、「挑戦」と「創造」に共感してくれる人材を求めている。例えば全社規模の大きなプロジェクトで、将来リーダーシップを取ってくれるような社員に育ってもらいたい。学生で見るのは潜在力、提出してもらった「自分史」に沿って話を引き出しキーワードに沿う人材か見ていく」(三井物産の平林義規・常務執行役員人事総務部長)という。

財閥系商社の最大のライバルである伊藤忠商事はどうか。「伊藤忠は生活消費関連で現場の方とよく接触するので、お客さん目線で仕事を進める人が活躍している。また少数精鋭の会社の中で自立して動けるかどうか、そういうところを学生に求めている」(伊藤忠商事で採用・人材マネジメント室長を務める金山義憲氏)。他社と比べると、より自社のビジネスや社風に合う人材を見極めているようだ。

特異な能力や素質を求める商社も

一方、はっきりとした求める人材像をあえて示さない商社もある。住友商事の稲田採用チーム長は、「多様な人材に来てほしいので、いわゆる求める人材像は定めていません、と学生に話している。2018年からES(エントリーシート)をやめたのも、事前に用意できちゃう内容で、学生にとって手間になるだけという考え方。それよりも人間性や本質的な部分を見ていきたい」と話す。

丸紅は、通常の新卒選考と並行して、この分野なら誰にも負けないという強みを応募資格とする「ナンバーワン採用」や、新卒だけでなく就業経験5年目程度までの若手を対象にあらかじめ入社後の部署を明示して募集するジョブ型採用の「キャリアビジョン採用」を実施。

その背景について尋ねると、「総合商社は100年超の歴史の中で変化を先取りしてきた先兵だが、いまはとくに変化のスピードが速い。 それに対応するためには人材の多様性や個別性を求めている。そのためにナンバーワン採用やキャリアビジョン採用を併願可で行っている。通常選考でも個別性を重視する」(丸紅で採用・人財開発課長を務める許斐理恵氏)。

各社が欲しい人材が分かれる中で、通常選考とは別に、特異な能力や素質を持つ学生の一本釣りを目指す商社も現れてきた。メーカーなどと異なり特定の設備や商材を持たない分、人がすべての資本となる総合商社。人材獲得の最前線となる新卒選考は熾烈な競争となっているようだ。

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秦 卓弥 東洋経済 記者

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はた たくや / Takuya Hata

流通、石油、総合商社などの産業担当記者を経て、2016年から『週刊東洋経済』編集部。「ザ・商社 次の一手」、「中国VS.日本 50番勝負」などの大型特集を手掛ける。19年から『会社四季報 プロ500』副編集長。21年から再び『週刊東洋経済』編集部。24年から8年振りの記者職に復帰、現在は自動車・重工業界を担当。アジア、マーケット、エネルギーに関心。

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