「在宅介護の利用手控え」に潜む過酷な家族の現実 高齢者施設はクラスター発生数が最多の危機

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コロナ感染を恐れて介護サービスの利用控えが広まる中、介護の不可欠な高齢者らを抱える家族の苦悩が深まっている。写真と本文は直接関係ありません(撮影:今井康一)

都内在住のAさんは今年1月、神奈川県内の有料老人ホームに入居していた母親を新型コロナウイルスの感染によって亡くした。93歳だった。

母親は75歳の時に認知症を発症。Aさんが自宅で介護をしていたが、7年前に母親が骨折をしたことをきっかけに施設に入所。入所後も、Aさんは母親の世話をするために毎日施設に通っていた。

「介護職員はぎりぎりの人数で働いているから、入所者1人ひとりに時間をかけられない。母親は自分で食べ物を口まで運ぶことができなかったため、私が毎回食事を介助していた」

母親が亡くなったのは、コロナ禍での面会制限でいつものように会えない日々が続く最中だった。Aさんが食事介助できず、固形物をうまく食べられなくなっていた。施設から送られてくる母の写真は、以前より痩せていたという。

施設内で約20人がコロナ感染

Aさんによると、施設では2020年末から年明けに約20人のコロナ感染者が発生し、5人が死亡。Aさんの母親も感染が判明し、病院に入院後に亡くなった。

Aさんは施設の対応に不信感を抱く。「介護職員は(自身がウイルスを持ち込むリスクを)不安がっていたのに、PCR検査を受けさせていなかった。施設は感染者の発生すら公表していない」。

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井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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