残業100時間超、保健所職員に迫る「心身の限界」 大阪保健師が悲鳴「逃げられるなら逃げたい」

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新型コロナウイルス感染者が急増し、業務の逼迫が続く大阪の保健所(写真:大阪府関係職員労働組合)

「『あの人への連絡を忘れてしまった』。現実との境目がわからないような、仕事の夢を見るようになった」。大阪府内の保健所で働くベテラン保健師のAさんは、こう打ち明ける。

新型コロナウイルスの第4波が全国で広がる中、住民を支える立場にある自治体職員の疲労は限界に達し、メンタル面にも深刻な影響が出始めている。

大阪府は2回目の緊急事態宣言解除から1カ月間足らずで、第3波を上回る新規感染者数を連日更新した。Aさんの本来の担当は、精神障害者などの支援を行う精神保健福祉だ。その担当業務と並行して、新型コロナの陽性者の感染経路を追跡する「積極的疫学調査」や入院先の調整といった臨時業務に携わる。

終電まで作業しても終わらない

Aさんが勤める保健所に保健師は15人しかいないが、新規陽性者と自宅療養中の陽性者を含め、毎日100人以上のコロナ患者への対応に追われる。数人の職員が終電過ぎまで作業しても、次の日に仕事が積み残される日が続く。

保健師を追い詰めているのは身体的な疲弊に加え、精神的なストレスも大きい。本来支援を必要としている人に対して、十分なケアを提供できないというストレスだ。

Aさんの精神保健福祉の業務では、各種依存症の患者や自殺未遂者といった、深刻なケースに対応することが多い。こうした今すぐに支援を必要とする人の存在を心の中に抱えながら、畑違いともいえるコロナの疫学調査を行っている。それでも誰一人として連絡を漏らすようなミスは許されない。

Aさんの2020年12月と2021年2月の残業時間は、過労死ラインといわれる月80時間を超え、月100時間以上になった。仕事とプライベートを割り切れる性格だというAさんが、冒頭のような夢を見始めるようになったのは、2020年秋ぐらいだった。

東洋経済プラスの連載「コロナ メンタル危機」で、この記事の続きが無料でお読みいただけます。連載で以下の記事を配信しています。

うつに不眠、「心の異変」相次ぐ医療現場の深刻実態

暗中模索の医療機関、コロナで不足する「職員ケア」

クラスター施設職員「2~3割がうつ症状」の悲惨

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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