「21世紀の資本論」が問う、中間層への警告 日本に広がる貧困の芽とは何か
本誌は今話題のピケティの『21世紀の資本論』を、国内ビジネス誌としては初めて特集して伝える。特に8ページにわたるピケティ本人のロングインタビューは、海外でも例のない読み応えだ。さらにピケティの提起する議論を端緒に、国内中間層をとりまく貧困の落とし穴についても考えた。
今回取材したが、紙幅が尽きて掲載できなかった問題のひとつに、教育がある。富裕層の所得が雪だるま式に増えるのと同様に、子どもの教育機会も親の所得に比例して充実する、という事実がある。東大生の親の年収は、950万円以上が半数以上、というのはよく知られた例だ。
開成高校の学費免除の試み
親の所得が生み出す教育格差とその世代間連鎖が社会問題となる中、この流れに逆らおうとする動きもある。そのひとつが私立開成高校(東京都荒川区)の学費免除の試み。2014年度から、経済困窮家庭の生徒を対象に、入学金や授業料を全額免除する制度を始めるという。
同校ではリーマンショック後、経済状況が厳しくなる在校生が増えており、在校生向け奨学金の利用もじわりと増えている。新入生向けの学費免除制度の新設はこの傾向を考慮したものだが、同校にとっては決して慈善事業の類ではないとう。開成高校の葛西太郎教頭は「経済的に困難な生徒ほど、何事も一生懸命頑張るという傾向がある。学校の中に、現実社会と同じ多様性を維持するためにも、さまざまな生徒を受け入れたい」と話している。
資本主義社会に生きる以上、私たちは格差や貧困とは無縁ではいられない。それが今のところの現実だ。であれば、この現実にいかに向き合うか。教育界にとどまらず、すべての人に問われているのではないか。今回の特集を進める中で、記者が何度も考えたことだ。
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