なぜか「活気のない職場」に共通する空気の正体 同じ仕事でも「飽きる人」と「楽しめる人」の差

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「そうよ。わたしのスタッフの仕事は、同じことのくりかえしでつまらないことばかり。でも重要な仕事なの。わたしたちは顧客の顔を見ることはないけど、もし間違いがあると顧客は怒る。で、わたしたちが批判されるの。でも仕事をちゃんとやっても、だれも気づかない。ともかく、退屈な仕事なの。でもあなたたちは退屈な仕事をおもしろくやる方法を見つけたわけでしょう。すごいと思うわ」

「どんな仕事でもそれをやる人にとっては退屈だってことを考えたことある? あのヨーグルトおじさん(編集部注/魚市場には、ヨーグルトのカップで魚をキャッチする奇妙なイベントがある)の中には、仕事で世界中を旅行する人もいる。すごく楽しそうだと思うけど、彼らに言わせると、すぐに飽きてしまうそうだ。条件次第では、どんな仕事でもつまらなくなるんだね」

「確かにそうね。十代のころ、若い女の子があこがれるような仕事をしたことがあるの。モデルの仕事よ。でも1カ月もするとすっかり退屈してしまった。ぼうっと立って待ってるだけなんですもの。ニュースキャスターも同じよ。たいていほかの人が書いた原稿を読むだけなんですって。そんなのつまらない……少なくとも私にとっては」

どんな態度で仕事するかは自分で選べる

「オーケー。どんな仕事でも場合によっては退屈になるなら、逆にどんな仕事でも情熱をもっていきいきとやることもできる。そうだね?」

「よくわからないわ。例を挙げてくれる?」

「いいよ。市場のなかを歩きまわって、ほかの魚屋を見てごらん。活気なんかないから。君の言葉を借りると……ごみ溜め状態なんだ。やつらがあんな商売のやりかたをしてるのは、われわれにとっては好都合なんだけどね。

この前言ったように、パイク・プレイス魚市場も昔はあんなふうだった。でもぼくらはすごいことに気づいたんだ。仕事そのものは選べなくても、どんなふうに仕事をするかは自分で選べることに。世界に知られたパイク・プレイス魚市場をつくりあげるのに、いちばん役に立った教訓はそれだ。どんな態度で仕事をするかは、自分で決められるってこと」

メアリー・ジェーンは手帳を出して、メモしはじめた。

仕事そのものは選べなくても、どんなふうに仕事をするかは自分で選べる(イタリック調)。

彼女は自分がいま書いたことについて考えてから、たずねた。「なぜ仕事そのものは選べないの」。

「いい質問だ。仕事はいつでもやめられるから、その意味ではどんな仕事をするか選ぶことができる。でも与えられた責任やほかの要素を考えると、仕事をやめるのはあまり賢明ではないかもしれない。選べないというのはそういう意味だ。一方、どんな態度で仕事をするかは、いつだって選べる」

ロニーは続けた。「ぼくの祖母のことを話そうか。彼女はどんな仕事にもほほえみと愛情を持ち込んだ。ぼくたち孫は、キッチンで手伝うのが大好きだった。おばあちゃんといっしょに皿を洗うのは、すごく楽しかったからね。手伝っているあいだに、いろんな知恵を授けてもらった。子どもたちは、本当に貴重なものを与えられた。心から自分のことを思ってくれる大人を」。

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