日本が「セクハラ放置国」になった根底にあるもの なぜか「女性の問題」になっているという大問題

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角田 ハラスメント全般、勝手に「○○ハラ」と呼んでるだけで、日本に定義は存在しません。それが非常に深刻な人権問題だという認識がない。結果として、ジェンダーギャップ指数で日本は2019年121位、2020年は少し上がって120位。人権という視点で日本は世界のビリってこと。その事実を恬(てん)として恥じないという、理解に苦しむ国に私たちは生活してる。

性犯罪として成立するハードルが高すぎる

──職場でセクハラがあった場合、発生するのは事業主の措置義務違反のみ、なんですか?

伊藤 はい。しかも制裁は企業名公表で、これまで公表されたのはたった1件。抑止効果はないですよね。罰則らしい罰則がないから、そんなものだと軽視され続け、真剣に取り組まれていかない。被害をなくすために、違反者と企業に対する罰則付きの禁止規定の導入は不可欠だと思います。

角田 損害賠償請求だって100万円、よくて300万円とか、大した金額じゃないわけです。経営者も大したことじゃないと思っているんじゃないかな。「また女がゴチャゴチャ言ってる」みたいな。人の尊厳に関わる極めて重大な犯罪だという認識がほとんどない。

伊藤 同じ職場に守られない人が放置されたままなのも問題。雇用関係はなくても仕事に関わるフリーランスやインターン・就活生、ボランティアなどです。就活中のセクハラ事件が近年頻発してますよね。こうした弱い立場に付け込まれて被害に遭いやすい人たちも、早急に保護対象とすべきです。

──刑法は110年ぶりに性犯罪規定が見直され、処罰対象行為が拡大される、告訴せずとも捜査可能になるなど改正されました。でもまだ重大な積み残しがあると。

伊藤 犯罪として成立するハードルが非常に高い。無理やり、意に反してされた、だけでは認められず、暴行・脅迫を立証しなければならない。この暴行が何を指すかというと、刑法で4段階ある暴行のうち最狭義の、抵抗を著しく困難にする最も激しい暴行である必要がある。だから通常の暴行罪に該当するような暴力では、強制性交等罪になりません。

加害者の「故意」という要件も満たす必要があります。加害者が「同意してると思った」と弁明すると、検察は厄介だから不起訴にしちゃうことが多い。被害者が大ケガで瀕死の状態とかでもない限り、暴行の程度もひどくない、被疑者の言い分もあるんだろうと斟酌(しんしゃく)してなかなか起訴しないですね。

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