職場でのハラスメント根絶に特化した初の国際労働基準が6月に発効する。日本はこの条約を批准できない。ハラスメントそのものを禁止する法の未整備などで、条約の定める水準を満たしていないからだ。コロナ禍で性暴力被害の報告が激増する今、識者10人が日本の課題を指摘する。『脱セクシュアル・ハラスメント宣言"』編著者である、弁護士の伊藤和子氏と角田由紀子氏に話を聞いた。
日本には「セクハラの定義」がない
──今さらながら、セクシュアルハラスメント(セクハラ)を禁じる法の不在に驚きました。
角田由紀子(以下、角田) 男女雇用機会均等法で事業主に雇用管理上の措置義務として対応を求めているだけであって、「禁止」とあるわけではない。そもそもセクハラの定義がないんです。法的にしっかり対処したいなら、まず何が問題かの定義があって、それに対し法は何ができるかを書くのが順序のはず。でもそれがない。定義がないから禁止する規定がない。なぜ定義しないのか、政府の説明、聞いたことないわね。
日本って定義なしでズルズルやる国なんです。女性差別撤廃条約でも、国連の委員会から「女性差別の定義をまず作れ」と言われ続け、今に至るまで作っていない。
伊藤和子(以下、伊藤) 人権意識が低いというか、理解が足りないと思う。国際基準をそのまま導入すればいいのに、それをやらない。抵抗が大きいとか日本に導入してもうまくいかないとか、国際水準の人権を日本人にも保障しようという覚悟がないんでしょうね。
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