──原子力や放射能が人類学の対象になるとは意外でした。
私の人類学は地域研究ではなく、地域を超えた普遍的な問題を意識しています。現テーマのきっかけは津波。三陸での死者数が最多の石巻で、「人は津波について何を知っているのか」というテーマで参与観察をした。津波の場合、知識の蓄積もあるし、何が起きるかを身体を通して知覚することができます。原発事故は知覚の仕方が違う。ガイガーカウンターのような計測器や実験室がないと可視化できない。調査を通じ、私たちは放射能について知らないことがわかった。どうすれば知ることができるかが出発点です。
──世界各地に出かけます。
大きな問題が起きたら、関係する場所に行って多くの人から話を聞くのが基本です。歩く道が違えば見えるものも違うので、いろんな道を歩き、そこで会った人に話を聞くと多角的な見方ができるようになる。さらに、時々福島に戻って新たな知見の中に福島を置き直すと、隠れていたものが現れる。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
東洋経済ID 会員特典
東洋経済IDにご登録いただくと、無料会員限定記事を閲覧できるほか、記事のブックマークや著者フォロー機能、キャンペーン応募などの会員限定機能や特典をご利用いただけます。
東洋経済IDについての詳細はこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら