今の福島には原子力災害の問題が集中する。が、これは福島固有の問題か。ウラン採掘から核廃棄物の最終処分までを、世界規模で数万年後まで持続する「原子力マシーン」と捉えれば、それは福島だけで完結しない。前著のマシーンを探る旅のメインは英仏の使用済み核燃料再処理工場、今回はガボンのウラン鉱山跡だ。
──原子力や放射能が人類学の対象になるとは意外でした。
私の人類学は地域研究ではなく、地域を超えた普遍的な問題を意識しています。現テーマのきっかけは津波。三陸での死者数が最多の石巻で、「人は津波について何を知っているのか」というテーマで参与観察をした。津波の場合、知識の蓄積もあるし、何が起きるかを身体を通して知覚することができます。原発事故は知覚の仕方が違う。ガイガーカウンターのような計測器や実験室がないと可視化できない。調査を通じ、私たちは放射能について知らないことがわかった。どうすれば知ることができるかが出発点です。
──世界各地に出かけます。
大きな問題が起きたら、関係する場所に行って多くの人から話を聞くのが基本です。歩く道が違えば見えるものも違うので、いろんな道を歩き、そこで会った人に話を聞くと多角的な見方ができるようになる。さらに、時々福島に戻って新たな知見の中に福島を置き直すと、隠れていたものが現れる。
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