脱「磁力としての新自由主義」新しい生活困難層の支援急務 中央大学教授 宮本太郎氏に聞く

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みやもと・たろう 1958年生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学。北海道大学大学院教授などを経て、中央大学法学部教授。専攻は福祉政治、福祉政策論で比較対象としてスウェーデンを研究。内閣官房・安心社会実現会議委員、 総務省顧問なども歴任。
貧困・介護・育児の政治 ベーシックアセットの福祉国家へ (朝日選書)
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65歳以上の保険料が上がり続ける介護保険、施行の翌年に「保育園落ちた 日本死ね」が新語・流行語大賞トップ10に入った、子ども・子育て支援法──。制度そのものは悪くないのになぜ福祉は停滞するのか。積極的な政策提言で知られる政治学者が、巧みな切り口で解明したうえで、今後の福祉の可能性を示す。

──日本型生活保障は雇用中心。

自民党による利益誘導型政治は、結果的に雇用を軸とした生活保障として機能した。例えば公共事業や業界保護です。一時期は10人に1人が建設業で働いた。9万軒ある自動車整備工場の収入の4割が車検制度によるものです。利権という批判もあったし雇用は男性に偏ったが、稼ぐことで自尊心も保たれた。受け身のまま福祉漬けになるよりよかったのではないか。経済成長の果実が均霑(きんてん)する回路にもなった。ただ、時代の変化に対応できず雇用は劣化しています。

──社会民主主義が顔を出す。

世界的に、福祉国家は社民主義的立場から提起された。日本に強力な社民政党はなかったが、一定の政治的条件の下では社民的施策が浮上した。それを「例外状況の社会民主主義」と名付けました。非自民連立政権後の自社さ政権で介護保険制度ができ、2009〜12年の麻生政権〜民主党政権期に子ども・子育て支援制度、生活困窮者自立支援制度、税と社会保障の一体改革がまとまった。

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