日本が「セクハラ放置国」になった根底にあるもの なぜか「女性の問題」になっているという大問題

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角田 未必の故意という言葉がありますよね。殺人事件だと、刺した箇所によって弁解の余地なく殺意が認められるケース。性犯罪なら「相手は嫌かもしれないけど、まあいいや」というような。でもどういうわけか性犯罪については、裁判所は未必の故意をほとんど認めず、無罪になることが多いわけ。なぜそうなるのか疑問です。

あらゆる場面で女性を性対象としてみる風潮

──同意のない性行為そのものを処罰化することも必要に?

伊藤 世界のトレンドは、暴行・脅迫要件を撤廃し、同意なき性行為をすべて犯罪とする不同意性交罪の導入です。ここでも日本は遅れてる。「嫌よ嫌よも好きのうち」なんて使い古されたセリフが、いまだにはびこってる。

角田 その考え方の根底には、女性が自分の頭で意思決定をし、意思表示できることを認めていない社会風潮があるわけです。女なんてそんな高尚なアタマしてないから、口で嫌と言っても本当はいいんだという、加害者側、多くは男性側の希望的な考えがある。自分と同じ一人前と女をみていない。だからすごい勝手な話なのよ。

これはとても厄介な、日本社会の根本に刺さる問題。そこから検証しないとセクハラはなくせないと思う。かつて週刊誌が命名した、からかいを含む「セクハラ」という言葉の響きの軽さによって、暴力である本質が見過ごされてる。

そもそもセクハラってそれをする人の問題でしょ。でも被害者の圧倒的多数は女性だから、なぜか女性の問題みたいにいわれ、女性自ら解決策を迫られる。本質は、加害者の男性が、どうしたら人としての尊厳を踏みにじる加害者とならずに済むか、考えるべきなのね。

伊藤 教育もすごく大事だと思う。2年半前に週刊誌の「ヤレる女子大学生ランキング」という特集が問題になったけど、雑誌でもテレビCMでも、あらゆる場面でレイプカルチャーというか、女性を性的対象としてみる風潮がある。

そんな中で「セクハラはやめましょう」とおざなりな企業研修を実施する程度では足りないでしょう。セクハラカルチャー全体を問うていくことが必要だと思います。そうしないと、声を上げた女性をトラブルメーカーのようにたたく状況が続く。きちんと罰を科すこと、社会の意識を変えること、それが両輪なのかなと思いますね。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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