東京女子医大の現役医師が訴える深刻な労働実態 退職超過「診療に支障きたす事実ない」は本当か

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指導的な立場のB医師は、東京女子医大の内情を明かした。

「普段から経営陣は『女子医大は手術で稼ぐ病院』と公言しています。そのせいか、外科が優遇されて新型コロナの対応などは、内科に負担がかかっている印象を受けます。大学病院の医師のミッションは、診療、研究、教育の3つありますが、4月から医師が大幅に減ってしまい、診療だけで手一杯の状況になりました。後輩医師の教育は、時間の余裕がないとできません」(B医師)

<影響④ 教授が月8回の当直、新規外来や入院の中止も>

本院の内科以外にも、医師一斉退職の影響は出ている。

ハイリスク妊婦の新生児や超未熟児などを担当する、本院の新生児科。NICU(新生児集中治療施設)18床、GCU(回復期病床)21床を5人の常勤医でカバーしていたが、3人が退職した。新規採用は1人のみ。

この影響で、新生児科の教授が月8回の当直をしなければ維持できない事態になっている。新生児科のウェブサイトには、すでに退職した医師たちの名前が掲載されたままだ。

付属病院血液内科の外来診療担当表がすべて空欄に

付属病院の八千代医療センター(千葉・八千代市)では、4月から血液内科の外来診療担当表から、医師の名前が消えてすべて空欄になった。

八千代医療センター(千葉・八千代市)の血液内科は診療を大幅に縮小しており、医師の外来担当表は空欄のままだ(筆者撮影)

血液内科とは、急性骨髄性白血病などの血液がんや再生不良性貧血などの治療を行う専門性が高い診療科の1つ。以前は4人の医師が月曜から金曜までの外来をカバーしていたが、現在は常勤の医師がいなくなった。

関係者によると、新規の患者には対応できなくなり、これまで通院していた患者を1人の医師がフォローしているが、それも6月末までの勤務予定だという。この医師が去ると、血液内科は実質的に閉鎖状態となるだろう。

『常勤スタッフが不在のため診療を縮小しており、新規の紹介は受け付けておりません』

これは、同センター・呼吸器内科の外来診療担当表に付記された一文である。

5人の医師が外来から入院治療まで対応していたが、4月からは医師2人になり、外来だけになった。新規患者の受け入れや入院治療は中止されている。呼吸器内科は、肺がんなどの重篤な患者の治療も担当する重要な診療科。入院治療ができない状況は、大学病院として頼りない。

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