中国企業をいまだに侮る人が知らない躍進の本質 日本人が想像もできてなかった変化が起きている

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とはいえ、立ちはだかる壁の存在も否定することはできない。たとえば、最大の課題は政治的影響だ。誰の目にも顕在化している米中対立のみならず、インドでも反中感情が高まって進出への逆風は強まっており、中国企業はかつてない試練にさらされている。

そのためビジネス環境の変化を懸念し、国外事業を躊躇する企業も増えているようだ。したがって、中国企業が本当の意味でのグローバル企業へと成長するためには、現地のニーズをしっかり把握し、現地のマーケットでたしかな信頼を獲得することが求められるだろう。

だが、それは簡単なことではなく、多くの試練が待ち受けているということだ。

意識とモチベーションの変化

そうした現実を確認したうえで印象に残ったのは、趙氏が本書の「おわりに」の部分で明らかにしている「中国の起業家の意識とモチベーションの変化」だ。これは非常に重要な部分ではないかと思うので、少し長くなるが引用しておきたい。

1990年代の起業家たちは一攫千金の夢を追っていましたが、現代中国には、理想を追い求め、イノベーションにより、多くの人に豊かな生活スタイルを提供しようとする高い志を持つ起業家が増えています。中国の経済社会やテクノロジー分野の動向を的確に把握するためには、中国企業や起業家の変化を見落としてはなりません。
近年の中国新興企業の成長は著しく、さまざまな業界の勢力図を塗り替えつつあります。日本の企業には、中国新興企業を脅威と捉えるのか、味方と考えるのかといった、戦略上の新たな課題が浮上しています。
中国企業の国外進出により、市場開拓や人材争奪でライバルとなる可能性は否めません。その一方で、中国新興企業の成長の物語や経営戦略には、日本企業の参考となる情報があるはずです。(254ページより)

政治的な問題もあり、中国や中国人について複雑な感情を抱いている方もいるかもしれない。だが、少なくともビジネス的な意味では、中国を客観的に捉え、正しく理解することがまず大切なのではないだろうか?

そして趙氏もいうように、中国の変化とイノベーション能力の向上の波をチャンスとして受け止め、チャイナテックを筆頭とする中国の豊富なイノベーションリソースやアイデア、活力、人材、資金力などを十分に活かす戦略が求められているのである。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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