子どもを「心理的危機」に追い込む大人たちの盲点

覚えておきたい、自己決定を促す「3つの言葉」

そのためには学校は2つのことを並行して実現する必要があります。

ひとつはやはり教育の現場を、子どもたちが安心できる環境にしていくことです。キーワードで言えば「失敗しても大丈夫だよ」「失敗こそが学びなんだよ」ということに尽きます。これを単なる標語で終わらせるのではなくて、すべてが許される環境を整えることが重要です。

そうは言っても、いつも安心安全な場所をつくることが可能かというと、そうではありません。社会にでればいろいろなトラブルがあります。そういったトラブルや環境の変化などからくるストレスに強い脳をつくっていくことも、子どもの成長のために必要です。つまり心理的安全状態を自らつくることが得意な脳を育む、ということです。教育者の役割はこの2つに集約されると思います。

「叱る」を目的にしない

学校や家庭を子どもが安心できる場所に変えていくときにまず大人が意識したいことは、「大人たるもの毅然とした態度で叱るべきだ」という思い込みを捨てることです。叱ることは子どもの意識の矛先や考え方を変えていくうえでのひとつの手段にすぎないのに、叱ることが目的化している大人は少なくありません。

叱ることが一概に悪いわけではありません。麹町中学でも子どもの命に関わることに関しては、迷うことなく叱ると全教員で共有していました。しかし、それ以外のことでは、頭ごなしに叱ることはありません。もちろん体罰のような暴力行為はもってのほかです。なぜなら「子どもがどう変化するか」という「結果」のほうが大切であり、「叱る」行為は、そのための手段にすぎないからです。

そもそも大人がどれだけ長々と説教をしても、子どもの頭は真っ白になって伝えたいことが半分も伝わっていないかもしれません。ダメ出しをしたことが記憶に強烈に残って自己否定が増長されるかもしれません。叱った大人に対する恐怖心や嫌悪感が増し、精神的な結びつきが失われるかもしれません。

そういったネガティブなインパクトをすべて想定したうえで「それでも叱る価値がある」と判断したのであれば、叱ればいいと思います。そこまで考えていないのであれば、これを機に考え方を改めてみてはどうでしょうか。

「叱ること」が目的化するとよく起きるのが、子どもたちに対して「平等に叱ろう」と思ってしまうことです。どこの学校でもよく見かける光景です。

たとえば問題行動を起こす子どもは、登校してから下校するまでいろいろな先生から叱られ続けます。その子は自分の行動をコントロールする術をまだ身につけていないだけなのですが、平等に叱ることが正しいと思い込んでいる先生から見れば、その子は叱る対象になってしまうのです。子どもにとってはたまったものではありません。

優れた教員は、もしそんな生徒がいたとしたら、本当に大切なことを伝えないといけないとき以外は叱りません。実際に叱る必要があるときでも怒鳴りつけるようなことはほとんどしません。なぜならその子はすでに何度も叱られてストレスがオーバーフローしているはずだからです。

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