子どもを「心理的危機」に追い込む大人たちの盲点 覚えておきたい、自己決定を促す「3つの言葉」
もし子どものことを真剣に考えているのであれば、叱り方はその子の置かれている状況や特性に応じて変わっていくのが自然なはずです。一定の基準で平等に叱るということは、一見正しいことのように思えて、実はそうではないのです。
子どもに自己決定を促す「3つの言葉」
安心できる環境をつくることと、ストレスに強い脳をつくることが同時にできる、魔法のような言葉があります。麹町中学では「3つの言葉がけ」と呼んでおり、子どもに何かトラブルが起きたとき、全教員がその対応方法の指針としているものです。
もちろん、保護者にもできるだけ家庭で使ってもらうよう紹介しています。その言葉とは以下の3つです。
これは全国の学校や家庭、職場ですぐに使うことができます。麹町中学は日本政治の中枢である永田町の真隣にある土地柄、経済的に裕福で教育熱心な家庭が多く、地元の子どもたちのほとんどは小学受験や中学受験をします。いまでは教育方針に対する知名度も上がり第一志望で入学する生徒の割合も増えましたが、私が校長になった当初は、新入生のほとんどが中学受験に失敗した第二志望以下で入学してくる子どもたちでした。
そのため毎年4月になると、校内は傷付いた子どもたちであふれます。主体性を失った、劣等感いっぱいの子どもたちが山ほど入ってきます。なかには小学生のときに長い間不登校だった子どもが、麹町中学に一縷の望みをかけて入学してくることもあります。
そういった子どもたちの多くは自己肯定感がとても低く、自分のことが嫌いです。そうやって自己否定に走っている子どもの特徴は、自分が置かれた環境が嫌いです。
「学校なんて信頼できない」
「親も大人もみんな嫌いだ」
「先生なんかみんな敵だ」
「信用できる友だちなんているわけない」
そういう子どもたちです。
彼らを、当事者意識を持って、主体的に考え、判断し、行動する自律した人間に変えていくことを、麹町中学では「リハビリ」と呼んでいます。このリハビリの中心的な役割を担うのが「3つの言葉がけ」です。子どもの心理的安全を保ちつつ、メタ認知の訓練をしていく手段として、いまのところこの言葉がけに勝るものを知りません。
第1の言葉がけの「どうしたの?」で、子どもの置かれている状態を言語化してもらいます。メタ認知に必要な自分の内面に意識を向ける訓練にもなる言葉であると同時に、子どもが何をしても頭ごなしで叱らない、ことがポイントです。
第2の言葉がけの「どうしたいの?」で、子どもの意志を確認します。自分の置かれた状態を解決するための方法を、頭のなかで考えてもらうためのきっかけづくりです。
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