有名中高一貫校の不登校生が通う施設の持ち味 元校長らが支援、修学支援センターに集まる志

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
有名私立中高一貫校の元校長が丁寧に指導する(筆者撮影)

この日、午後からは中学生を対象にした「アクティビティ」の時間があった。新学年が始まったばかりということもあり、親睦を深める意味でのゲーム大会を行った。参加者は3人だったが、そこに先生たちと大学生ボランティアと私が加わった。教員志望だという大学生ボランティアがうまく場を盛り上げる。

隣の教室(会議室)では、高校生たちが事務用のテーブルを卓球台に見立て、スマホをラケットにして、ピンポンに興じていた。中学生のゲーム大会が終わっても、まだピンポンが終わる気配がない。"放課後"のセンターが彼らの居場所になっていた。

大学生ボランティアが言う。「ここに来ている子どもたちは、コミュニケーション能力もあるし、学習意欲も高いし、『君が不登校って、うそでしょ!?』って子がほとんどです」。ある元校長は「ここの子はみんな真面目で意欲的です。逆に雑談がしづらくて困ってます」とおどける。

不登校になった理由はさまざまだ。「起立性調節障害」といって、朝どうしても起きられない生徒もいる。大人数の集団の中に身を置くこと自体に不安を感じる生徒もいる。たまたま担当教師やまわりの友達とそりが合わないというケースもあるが、その場合は、環境が変われば学校に復帰する可能性が高い。

元校長が告白する懺悔の気持ち

また別の元校長は「ここに係わるようになってからというもの、懺悔の日々ですよ」と苦笑いする。管理職として、生徒やそのご家族にとって大変厳しい判断をしたことも一度や二度ではない。しかしここでの子どもたちの様子を見ていると、学校には通えていなくても、学校にいたい、学びたいと思っていることが直にわかる。学校のルールに生徒を合わせることが当たり前だと思っていた若かりし自分を悔いるのだという。

先の大学生ボランティアが付け加える。「私はここでお手伝いを経験することで、不登校に対するイメージが変わりました。たとえば若手教員の研修として、このセンターに数週間勤務してみるのもいいのではないかと思います。そうすれば、学校での生徒たちに対する態度も変わるのではないでしょうか」。

これはすばらしいアイデアだ。しかも、私立中高一貫校にいったん就職するとその学校の文化しか知らないでキャリアを重ねてしまうことがあるが、修学支援センターでは各私学から来たベテラン教師たちの指導を間近に見ることもできる。いろいろな意味で教員としての視野が広がることは間違いない。

次ページ福岡県や京都府にも同様の取り組み
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事