中国へ宣戦?「バイデン施政演説」超強烈な中身 計量分析でわかった「トランプ以上」の強硬姿勢
このシナリオは、情報機関などから提供された資料と研究者・科学者など専門家の分析を基にNICが作成したもので、いずれも蓋然性がある。
しかし、GT2040を読むうえで重要なことは、蓋然性の多寡を論ずることではなく、アメリカ大統領にとって最も理想的なシナリオは何かということであり、さらにはそのシナリオを実現するためにアメリカ大統領はどのような政策を実行していくのかを考察することである。
その視点から施政方針演説を振り返ると、バイデン氏が望む世界の姿は「民主主義の復活」の一択でしかない。
バイデン氏は「国を再建し、民主主義を再び活性化し、アメリカの未来を勝ち取ることをについて話したい」との言葉で演説を始めた。
そして結びでは「アメリカの敵である世界の専制主義者(独裁者)」がアメリカの民主主義を過小評価していることに対して、「専制主義者(独裁者)は未来を勝ち取ることはない。アメリカが勝ち取るのだ。未来はアメリカにある」と強調している。
日本政府に求められる「絶妙なバランス感覚」
施政方針演説で中国と習氏を専制国家・専制主義者と名指ししたことは、中国がアメリカの建国理念である自由と民主主義に相反する国家であると政策的に定義したに等しい。そして、それは今後の米中関係が実利での競争から理念の対立、すなわちどちらが正しいのかという「正義」の対立に軸を移したと見ることができる。つまり、米中ともに振り上げた拳を下ろすに下ろせない状態に入ったということだ。
強面でディール上手のトランプ氏の後に登場したバイデン氏は、柔和な表情と50年近い議員生活で培われた上品な口調と物腰から、日本ではハト派のイメージで捉えられている。しかし、国民に向けて「団結しようではないか」と呼びかけて演説を締めくくったバイデン氏のビジョンは、覇権争いの相手である中国を打ち破り、民主主義を復活して1つのアメリカを再建することであるのを忘れてはならない。
「日米同盟を外交・安全保障の基軸」(2021年版外交青書)とする日本は、国家安全保障局(NSS)に経済安保の司令塔となる経済班を発足させるなど、経済安保でもアメリカと歩調を合わせている。一方では最大の貿易相手国である中国(構成比20%超)と経済・軍事の両面で緊張感関係に陥ることを避けなければならない二律背反の状態にもある。
コロナ禍で見過ごされているが、近い将来に必ず顕在化する米中間の新たな戦いにおいて、日本政府には絶妙なバランス感覚を発揮した舵取りが求められている。
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