中国へ宣戦?「バイデン施政演説」超強烈な中身 計量分析でわかった「トランプ以上」の強硬姿勢

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バイデン氏が国防総省までも動員して研究開発での優位性を確保しようとする背景には、新たな戦いの形態である「経済安全保障」(経済安保)という概念が存在する。経済安保の実像を一言で表せば、「軍事力を使わない戦争」が適切だろう。

経済安保の概念は米中の覇権争いが顕在化した2010年代後半に登場した。米中が軍事的な対抗措置の代わりに経済というツールを使って覇権争いに決着をつけるという文脈のうえで使われている。

すなわち経済安保とは、神の見えざる手によって均衡が保たれていた経済を国家が「武器」あるいは「戦場」として恣意的に利用することを意味する。中国企業が開発した動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」の排除やファーウェイへの制裁は経済安保の象徴的事例であるが、それは新たな戦いの序章にすぎない。

最も言及された国は中国ではなかった

政治学の分野では、指導者の発言に登場する単語(キーワード)の出現数から政策の傾向を読み解く計量分析という手法が用いられる。

バイデン氏の演説を計量分析してみると、登場した国と地域は10個で、そのうち中国は4回言及された。国家指導者で名前が登場したのは中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領の2人だけで、習近平氏のみが3回言及されたことがわかる。アメリカの経済安保の対象は言うまでもなく中国であり、それは計量分析の結果からも明らかだ。

なお演説で最も言及された国は、実は中国ではない。期待を裏切らないように先述すれば、それは日本でもない。残念ながら日本はジョージ・W・ブッシュ大統領時代から施政方針演説で言及されていない。

答えはアフガニスタンで、6回言及されている。アフガニスタンに駐留するアメリカ軍を念頭に「20年間に及ぶアメリカの勇気と犠牲を経て、アメリカ軍を帰還させるときがきた」として、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロを受けて開始した対テロ戦争の終結を宣言した。

日本ではあまり大きく取り上げられていない対テロ戦争の終結だが、経済安保の観点からは大きな意味を持っている。

20年間にわたる対テロ戦争の対価は、最大で10万人に上るアフガニスタンへの駐留と約2300人の戦死者、約6.4兆ドル(約700兆円)という莫大な戦費だ。一方で国際テロ組織「アルカイダ」のビンラディン指導者を殺害したもののテロ自体を根絶するには及ばず、過激派組織「イスラム国」(IS)が登場したようにテロの芽を世界に散らしてしまった。

端的に言えば、バイデン氏が高らかに宣言した対テロ戦争終結とは、中国と覇権争いをするうえでの足かせをなくし、人的・経済的な資源をインド太平洋地域と経済安保分野に再配分することなのだ。

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