「ポイント投資」で投資の勉強などできないワケ 「おまけを使う娯楽」のようなものにすぎない?

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つまり投資とは、自分が一生懸命働いて稼いだお金をつぎ込んだにもかかわらず、自分には何の責任もない理由で損をすることもありうる、という実に理不尽なものなのです。もちろん、判断をしたのは自分ですから、責任がないことはないでしょうから、それを「理不尽」というのは適切ではないかもしれませんが、投資の経験のある人なら、この理不尽さや悔しさはきっと誰もが経験したことがあると思います。

そしてこれは感情の問題ですから理屈で割り切れるものではないのです。当然、逆の場合もあり、たまたまラッキーなことに大幅に上昇することだってあります。それが不確実性というものですし、そういう悔しさや驚き、不安という感情の揺れを経験することで投資の本質と向き合い、理解することができるのです。

ところがポイントというのは、いわば買い物をしたおまけです。もちろんたとえおまけでもそれが増えるとうれしいでしょうし、減ったら悔しいでしょうが、自分が働いて稼いだお金で投資した場合とは、そのレベルはまったく違います。私も試しに自分でポイント投資をやってみましたが、ゲーム的な感覚しか感じることはできませんでした。

ポイント投資に力を入れる証券会社の思惑

もし、「ポイントは下がっても、おまけだから損をした気持ちにならないのがいい」と本当に思っているのであれば、それは実際の投資には何の役にも立たないでしょう。そういう下がって悔しいとか腹立たしいという気持ちがあるからこそ、次は失敗しないようにもっと勉強しようとか、今回の間違いを教訓にしようと思うのです。

したがってゲームとして遊ぶならよいでしょうが、少なくとも投資の練習になることはありません。それにゲームとして楽しむなら、今の時代はもっと楽しいオンラインゲームはたくさんあります。本当に投資の勉強をしようというのであれば、たとえわずかな金額であっても自分で新たにお金を出してやるべきです。

おそらくポイント投資自体は証券会社にとってはあまり儲からないでしょうが、これでうまくいった人からさらに大きなお金を投資してもらえるようになることを期待しているのだと思います。ポイント投資に限らず、ここしばらくはマーケットが好調であるため、投資を始めた人は多いようですが、「自分ではよくわからないのでロボアドに任せよう」とか、「自分で考えなくても投資ができる」という風潮には危ういものを感じます。

これは今の相場がバブルかどうかということとは関係なく、好調な相場のときには必ずそういう人が増えてきます。そしてそんな姿勢で投資を続けていて結局は失敗した、という人たちを私自身、50年近い株式市場との付き合いで何人も見てきているからです。

今の時代は、投資信託なら最低金額は100円から投資することもできるのですから、少額からでもできます。投資に大事なのは覚悟と勇気です。そのためにやはり投資は自分で稼いだお金ですべきではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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