できるリーダーは「存在感が薄い」納得の理由 老子が考える東洋人らしい「美しい人間性」とは

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一方で、老子はリーダーシップについてどんなことを言っているでしょうか。

太上は、下のこれ有るを知るのみ。

「太上」とはすなわち「最高のリーダー」のこと。最高のリーダーは、その下の人たちにとって、「知るのみ」と老子は表現しています。下の人たちにしてみれば「そういう人がいる」ということは知っているけれど、それ以上のことは何も知らない。その人の存在をさほど感知してない。それが最高のリーダーだと老子は言うわけです。

そしてこの言葉の少し後には、次のような続きがあります。

猶として、それ言を尊ぶ。
 功成り事遂げて、百姓みな、われ自ら然りと思えり。

リーダーたるもの余計なことをごちゃごちゃ言うのではなく、言葉少なくあれ。すると、人々は何かの仕事を成し遂げたとき「自分でやり遂げた」と感じることができる。そんなリーダー像を老子は説いています。

さりげない「お膳立て」ができる

なかなか興味深いリーダー論ではないでしょうか。冒頭から、最高のリーダーとは「そんな人もいるよね……」と思われているくらいの存在だと語っています。これだけ読むと「存在感の薄いリーダー」という印象ですが、その真髄は後半の文章から感じ取ることができます。

とにかく、リーダーは「余計なことをごちゃごちゃ言うな」。自分の体験や成功論をくどくどと話すようなリーダーは、しょせん一流ではないということです。そして、すごみを感じさせるのは最後の部分です。一流のリーダーのもとで仕事をする人たちは、何かを成し遂げたとき「自分の力でやり遂げた」と感じることができる、と述べています。

多くの人にとって「そんな人もいるよね」というくらいの存在感のリーダーでありながら、実際には、チームのメンバーや部下たちが活躍できるようなお膳立てをしっかりと、さりげなくやっている。そして、実際に何かを成し遂げたときには、部下たち自身が「自分の力で成し遂げたんだ」と思える。なんと素晴らしいリーダーでしょうか。

最近は若い人を中心に「会社に求めること」として「やりがい」や「成長」を挙げる人が増えてきました。その会社で仕事をすることで、働くことの喜びを感じられたり、自らが成長していると実感できること。そうした「やりがい」や「成長実感」にとって欠かすことができないのは、やはり達成感です。それも「自分の力でやり遂げたんだ」という自己効力感ではないでしょうか。

そういう意味でも、さりげないお膳立てをしておきながら、自らの存在感は薄め、現場の人たちが達成感を得られるようなマネジメントをする。紛れもなく優れたリーダーです。

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