驚きの「台北―富士山―台北」遊覧飛行の舞台裏 チャイナエアライン、ジャンボ機お別れツアー

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機内では、富士山周辺の上空に差し掛かった際、搭乗客全員で乾杯するというお別れフライトならではイベントもあった。宮崎所長は「プロポーズをするカップルも現れたんです。乗客一人ひとりの人生の一コマに静岡県と富士山が寄り添うことができた」と満足感を示している。

チャイナエアライン側も静岡県上空に向かうことを意識し、上級クラスの乗客には機内で同県の名物の一つである「うな丼」を振る舞った。さらに搭乗者全員に帰着直前に配られた搭乗証のフォルダーには、静岡県事務所の文字とともに富士山をモチーフにしたデザインが描かれていた。

「コロナ禍が解決したら、改めて静岡県を訪れてほしい」という川勝平太同県知事のメッセージカードも渡されるなど、観光事業に携わる人々の思いがあふれたPRだったが、はたして台湾からのインバウンド復活はいつごろになるだろうか。

ほかの空港に寄港せず、飛び立った空港へ数時間後に戻ってくるという遊覧フライトは、ANAによる2階建て超大型機エアバスA380を使った企画が好評だ。

一方、今回チャイナエアラインとコラボした静岡県では、同県内に拠点を構えるフジドリームエアラインズ(FDA)がチャーター便として、静岡空港発着の富士山周遊フライトを2020年冬ダイヤの期間中実施していたという。こちらの企画では実際に富士山をぐるりと一周する。静岡県空港振興課の石ケ谷彰英課長は「コロナの影響で他県への移動が難しくなった修学旅行生による利用実績もある」と説明。航空会社からみれば苦肉の策だったものの、これまでに一定の成果が得られているようだ。

「コロナ明け」の訪日客回復に期待

台湾では4月に入り、太平洋に浮かぶ島・パラオへの旅行を解禁した。当初は団体旅行の形態で運営されるものの、旅行の前後での自主隔離は求められないというのが特徴だ。台湾政府は現在、シンガポールやハワイについても交渉中だという。

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「海外旅行につながる企画を一つでも始めていかないと旅行業が再起動しない。安全な国同士で行き来ができるモデルケースが生まれるのは喜ばしいこと」(宮崎所長)。コロナ禍で国際間の動きが止まる中、こうした取り組みは評価できよう。

前代未聞の「外国の領土上空を飛ぶ遊覧飛行」の実現は、コロナ禍における新たな気づきだったといえようか。こうした機会を通じて改めて日本に関心を持った人々が、「コロナ明け」に再び戻ってくることを期待したい。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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