米国保守を代表する知識人「ハゾニー」は何者か 自由民主主義に代わる「保守民主主義」の提唱者

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このようなアメリカをはじめとする欧米各界の人々にナショナリズムの復権を呼びかける際の、ハゾニーの基本的スタンスが示されているのが『ナショナリズムの美徳』である。

ハゾニーの「こわもて」なナショナリズム論

本書の入り口はわかりやすく明快である。ハゾニーの主張はひと言でいえば、独立した国民国家からなる世界こそが最良の政治秩序であるというものである。ハゾニー自身、シオニストであるとおり、胸を張ってナショナリストであり、読者にも本書を通じてナショナリストになることを促している。

ハゾニーは、紀元前にはるかさかのぼるユダヤの民の歴史を念頭に置いて、「共通の言語や宗教的伝統などの共有の遺産をもち、共通の敵に対抗して団結してきた過去をもつ、複数の部族」という意味でネイションを語る。そのために『ナショナリズムの美徳』では、「国民」や「民族」という訳語をあてることができない場合、カタカナで表記している。この語りの射程の長さが、ハゾニーのナショナリズム論のひとつの特徴になっている。

ハゾニーのナショナリズムの擁護の議論は、断固とした、容赦のない側面を多々含んでいることも指摘しておく必要があるだろう。

たとえばハゾニーは、すべてのネイションが独立する権利があるわけではないと明言しており、多くの要件がそろわなければ、それらを満たさないネイションは独立の支援を受けるべきではないと述べている。

ハゾニーはまた、一国内に多数派のネイションの存在することがその国の安定の条件であると語るのだが、オック語を公式の場から数世紀にわたって排除してきたフランスや、ケルトの文化を徹底して破壊したイギリスのように、歴史的な国内統一の過程で少数派の競争相手を破滅させることを暗黙のうちに是認している。

ハゾニーのナショナリズム論からはこのように、ときおり強面(こわもて)の部分が顔をのぞかせる。ユダヤの民の歴史とイスラエルの現状に根差したハゾニーのこうした主張の真意については、ぜひ本書を実際にひも解いていただければと思う。

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