なぜNHKが独走?「歴史番組」の知られざる歴史 民放地上波では短命に終わってしまう理由

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1970年代は民放でもまだ時代劇がさかんに制作されていたが、いわゆるチャンバラ活劇、勧善懲悪の娯楽ものがメインであり、一方でNHKは大河ドラマに代表される重厚な歴史劇も多く、その制作過程において蓄積されていく合戦シーンなどの映像アーカイブは、新しい作品や歴史番組に2次利用された(映画会社が予算のかかる特撮シーンなどを他の作品で流用したのと同様に)。この、NHKならではの財産=アドバンテージは、現在に至るまで民放には真似できない領域とされている。

1980~1990年代は、「歴史への招待」の後継番組として制作された「歴史ドキュメント」(1985年スタート)、「歴史誕生」(1989年)、「歴史発見」(1992年)、「ライバル日本史」(1994年)、そして内藤啓史アナウンサーの講談調の司会が好評だった「堂々日本史」(1996年)、「ニッポンときめき歴史館」(1999年)など、その都度新たなアイデアが加わりながら、NHKの独壇場が続いた。

歴史番組の領域を大きく広げた「その時歴史が動いた」

2000年代を代表する歴史番組といえば、松平定知アナウンサーの格調高い司会ぶりが印象的だった「その時歴史が動いた」(2000年スタート)。タイトルのごとく、一つの歴史が大きく動いた決定的瞬間、ターニングポイントを具体的な日時として抽出し、そこに至るまでの主要人物の行動や心理、葛藤などを描いていく。

同年3月29日の第1回放送は「日本海海戦」、第2回は「沢村栄治とベーブ・ルース世紀の対決」と、取り上げるテーマはさらに幅広かった。戦史や文化史、スポーツ史まで、歴史番組の領域を大きく広げた。それは同年にスタートした「プロジェクトX~挑戦者たち~」と呼応するかのように、過去の歴史番組(そしてNHK)の殻を破るような大胆なアプローチをもって、「その時~」は2009年3月まで続いた。

記憶に新しいのは、2000年代後半あたりから到来した「歴女」ブーム。そのきっかけは諸説あるが、2007年のNHK大河ドラマ「風林火山」で、人気ミュージシャンのGackt(現GACKT)が演じた上杉謙信が、若い女性層の熱い注目を集めた。それまでは血なまぐさい合戦シーンなどを敬遠しがちだった女性層も、実は個性的なキャラクターを持った戦国武将たちの魅力を発見するなどして、ブームに火がついた。

さらにはアニメやゲームでも戦国武将を扱ったものが次々と登場し、それらをきっかけに戦国時代、ひいては歴史そのものに興味を持ち、メディアに登場する女性が増えていった。堀口茉純、小日向えり、美甘子など“歴ドル”と呼ばれたタレントがその代表格である。

女性が牽引する歴史ブームのなかで、主役の天璋院篤姫(宮﨑あおい)、脚本の田渕久美子と、女性がメインの2008年大河ドラマ「篤姫」は、平均世帯視聴率24.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークして大きな話題となった。

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