別姓婚「日本も有効」で露呈した戸籍制度の矛盾 25年も議論棚上げ、多様な夫婦への対応は急務

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東京地裁は、婚姻関係の戸籍への記載可否については、家庭裁判所への不服申し立てのほうが適切だとして判断を示さず、国家賠償についても退けた。一方で、前提となる婚姻の成否については国の主張を否定し「婚姻自体は有効に成立している」と明確に認めた。これにより、別姓の2人の婚姻関係が日本の法律において成立していると証明された。

判決後の会見で、夫婦同姓規定を満たす必要のあるパターンについて説明する弁護団。今回の判決で、日本人同士が外国で結婚する場合にも、別姓のままの婚姻が日本で成立することが明らかになった(記者撮影)

原告代理人の竹下博將弁護士は、「戸籍や相続の実務に照らせば当然の判断だと思っているが、この点が争点となって正面から判断されたのは初めてだ」と話した。不服申し立てをするのかどうかは今後検討する。

想田さんと柏木さんは判決後の会見で「わたしたちは法律婚であると明確に述べていただいたので、実質的な勝訴だと受け止めている。別姓でも夫婦になれると示してもらったので社会的意義もある」(想田さん)、「当たり前のことだと思っていたが、認められないのではないかと不安もあった。このような判決がくだって本当にうれしい。選択的夫婦別姓制度の実現に向けた大きな第一歩だと思う」(柏木さん)と笑顔を見せた。

遅々として進まない夫婦別姓の議論

これまで、日本における選択的夫婦別姓の実現に向けた動きは茨の道を歩んできた。

1980年代以降、氏を変えることによってアイデンティティーの喪失感を抱く、仕事上の不利益を被るなどの理由から、同姓でなければ結婚できない夫婦同姓制度への批判が強まった。1996年には法務省法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を提言する答申を行い、法務省が改正法案を準備。2010年にも改正法案を準備した。しかし、保守派議員が「家族の絆が危うくなる」などとして反対し、国会への提出には至らなかった。

2011年に夫婦同姓を定める民法規定は違憲だとして男女5人が提訴した「第一次夫婦別姓訴訟」では、最高裁が合憲と判断しつつ「国会で論ぜられるべきだ」と議論を国会に委ねたが、これも審議されてこなかった。2020年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画からは、自民党内の反発をうけ「選択的夫婦別姓」の記述が削除された。

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