プロ野球「無観客開催」で迫られる次なる一手 "宣言"の状況次第ではスケジュール変更も

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前述したように、昨年は各チームの試合数が143試合から120試合に圧縮された。開幕した6月19日から7月9日までは無観客で行われ、以後は5000人から球場のキャパシティの50%程度までの入場制限をかけて試合が行われた。

2019年は12球団で史上最多の2653万人余を動員したが、2020年は482万人。18%にとどまった。来場者の客単価を2500円とすると、2019年は663億円余の売り上げがあったが、2020年は120億円に減っている。単純計算で各球団平均で約45億円の減収となる。

今季は、開幕から制限付きで観客を動員しているが、それでも2019年の3割強で推移している。143試合を消化したとしても、2020年に続いて2019年比で大幅な減収になるのは確実だ。

厳しい経営状況の中での「無観客」要請

プロ野球の収益には、入場料に加え、球場での物販、球団グッズなどのライセンス、放映権、そしてスポンサー収入などがある。

新型コロナ禍によって入場料、物販収入が激減しても、その他の収益はそこまで減少しないと思われるが、それでもほとんどの球団で昨年は最終赤字になったと思われる。

よく知られているように1954年8月10日の以下の国税庁通達によって、親会社が球団の損失を補填した場合は「広告宣伝費」とみなすことが認められている。

一 親会社が、各事業年度において球団に対して支出した金銭のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分の金額は、これを支出した事業年度の損金に算入するものとすること。
ニ 親会社が、球団の当該事業年度において生じた欠損金(野球事業から生じた欠損金に限る。以下同じ。)を補てんするため支出した金銭は、球団の当該事業年度において生じた欠損金を限度として、当分のうち特に弊害のない限り、一の「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うものとすること。
(以下略)

親会社が支援しやすいルールになっているのだ。しかし広島は独立採算制で、連結決算に連なる親会社は存在しない。また、親会社との関係が実質的に「ネーミングライツ」のようになっていて、損失補填をしない契約になっている球団もあると言われる。

それに数十億円という欠損金は、親会社にしても簡単に負担できる額ではない。新型コロナ禍で業績不振にあえいでいる親会社もあるのだ。これが2年連続となればなおさら状況は厳しくなる。このままいけば、オフに球界再編が出来する可能性もあるだろう。

そんな厳しい状況で、国や自治体は緊急事態宣言の発出とともにNPBに今年も「無観客試合」を行うように要請している。

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