日本の「国産ワクチン事業」があまりに遅い真因 「過保護なワクチン政策」では国民は守れない

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アンジェス以外、第Ⅲ相(フェーズ3)にもこぎつけていない現実に愕然とする。第Ⅲ相試験では、より多くの被験者を集めねばならないが、はたしてどれだけの人が挙手するだろう?

すでにファイザーのワクチンの接種は始まっている。アストラゼネカとモデルナも承認申請中で、5月中にも承認の見込みとされる。アストラゼネカは承認次第、国内生産も始まる。

臨床試験(治験)は一般的に、開発中の新薬を先行して、費用負担なく使用できるというメリットが重視される。そのメリットが安全性へのリスクを上回ると判断するからこそ、被験者は応募するのだ。

すでに適切な手続きを踏んで実用化され、実用後も有効性と安全性が世界で示されている3社(ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ)のワクチンを、日本国民は無償で接種できる。国産ワクチンに興味がある人も、その安全性や有効性を期待してこそだ。優良な他のオプションがタダで手に入るなら、わざわざ身を挺する理由はないだろう。

海外展開も厳しい理由とは?

では国外に被験者を求めることは可能か? 残念ながら、それも「非常に厳しい」と言わざるをえない。欧米の新型コロナワクチン市場はすでに、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカなどで飽和しつつある。

それ以外の諸外国でも、すでに中国やインドのワクチンが国策としてばら撒かれてきた。インドは国内の第2波でワクチン輸出国から輸入国に転じたが、そこに中国やロシアが入り込もうとしている。日本産の新型コロナワクチンに残された隙など、ほとんどないのだ。

唯一、アフリカ諸国はまだワクチンが行き渡っていないが、ビジネス的には無理だろう。完全に途上国向けなら低価格に抑えねばならないが、開発コストの回収にあたって今さらその路線は選べない。

「ビジネス的に」という言葉を使ったが、これが実は新型コロナに限らず、国産ワクチンの根本的な問題だったりする。日本の人口規模では、市場として小さすぎるのだ。苦労して作っても、コストが回収できる見込みがない。

国内市場だけではもう生き残れないのであれば、市場も海外に求めればよいのではないか?

しかし現在、新型コロナに限らず日本がワクチン輸出国になれていない理由は2つある。1つは技術の問題だ。製薬OBに話を聞くと、「日本はアジュバントの技術が決定的に欠けています」という。

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