餅もミカンも注意「カビは削れば食える」の危険 多くのカビ毒は症状がすぐに表れない

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21世紀になって、食品中のカビ毒が社会問題になった1つの事件があった。2008年に起きたコメの不正転売事件だ。

大阪市に本社を置く食品会社が、残留農薬やカビが生えたため事故米とされる米を、偽って食品メーカーや焼酎メーカーなどに卸しており、最終的には農水省の大臣が辞任するまでに至った。このとき米に含まれていたのがアフラトキシンというカビ毒だ。強い発がん性があるとされ、テレビなどでも大きく扱われて、社会問題となり、輸入穀物の買い控えを助長した。

その後も食の安全を脅かす事件が起き、消費者の眼差しは厳しさを増している。今日では食品の安全性はもちろん、安心して食べられる信頼性が求められている。そこで本記事では、カビの健康被害について紹介していきたい。カビの正しい対処法について知られていないと感じるからだ。

同じ菌類でもキノコの毒性の特徴は異なる

カビと同じ菌類をそのまま食べているのがキノコだ。もちろん、スーパーなどで売っているキノコには毒性はない。

カビもキノコも同じ仲間なのだが、食物として見ると、両者の毒性の特徴は大きく異なる。キノコは子実体(しじったい)(傘や柄)の部分だけを食べるから、子実体内の有害成分に気を付ければよい。

一方、カビの場合は、目に見える菌体だけでなく、その周りの見えない分泌物質が有害なことが多い。餅の場合であれば、カビのところだけでなく、その周辺の数センチも取り除かねばならない。

子実体に毒があるキノコを一般的に毒キノコといい、日本だけでも、200種余りが生息している。毒キノコの多くは食べた当日に嘔吐や下痢などの食中毒症状を起こす。とはいえ、キノコの毒素成分が明らかになったものは、必ずしも多くない。その理由の1つはキノコは培養が難しいからだ。

培養中のシャーレにキノコが生えてきたら、大喝采である。それゆえ、毒性を調べるには野生のキノコを集めるしかない。何リットルも、何十リットルもの量のキノコを集めて成分を分析する必要がある。また、地域によって成分の量が大きく異なることも多いので、毒素の解明が難しい。

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