餅もミカンも注意「カビは削れば食える」の危険 多くのカビ毒は症状がすぐに表れない
激しい中毒症状をおこすキノコの代表は、タマゴテングタケである。毒素成分であるアマトキシンはアミノ酸からなる環状ペプチドだ。タンパク合成に関与する酵素の活性を阻害する作用がある。テングタケ中毒は、肝臓の機能を喪失させ、キノコ1本で人を死に至らしめる。
そのほかに、日本に中毒患者が多いニセクロハツがある。その毒素は強力な2-シクロプロペンカルボン酸である。日本では、7人の死亡例があり、食べてから数分で言語障害とけいれんに見舞われる。
近年は、真っ赤な炎の形をしたカエンタケという毒キノコが、夏から秋に公園などでも見つかる。このキノコは触っただけでもかぶれる。食した場合も、嘔吐や下痢などの症状を呈して腎機能に障害が起きる。
カビ毒はすぐに症状が表れない
一方、カビの毒性の多くは、キノコと違って、すぐに症状が表れない慢性毒性である。以下に詳しく述べたい。
カビ毒を生産することがわかっているカビは、私たちの身近にいる腐生菌(ふせいきん)である。穀物や果物などの食物から、カビ毒は腐敗に伴って発見される。リンゴでもミカンでも、よく生えるカビは大体決まっている。穀物では、収穫前と収穫後で生えるカビの種類が違っている。そういった食物で見つかるカビについては毒性が調べられている。
一方、食物に滅多に生えないカビは、毒性が調べられることはほとんどないと言ってよい。
今日知られているカビ毒は300種類余りである。その中でも毒性の強弱の差は大きい。多くのカビ毒による健康被害は、肝障害や発がん性などの慢性疾患である。カビの生えた穀類やその加工品を長期間食べ続けた場合に起きる。慢性毒性は症状がわかりにくく、科学的に原因成分を特定するのが一般に難しい。さらに、カビ毒は加熱しても分解しない成分が多いことが、その対策を困難にしている。
一方、1種類のカビが1種類だけの毒素成分を生産することはまずない。化学構造のよく似た一群の化合物を生産し、それぞれが毒性を発現する。一方、同じ属でも、各種のカビが作る化学物質は多様である。ゆえに、各属の中でカビ毒を作るカビの種類は決して多くない。例えば、アオカビ属の種数は300種余りだが、毒性の知られているのは30種余りである。
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