餅もミカンも注意「カビは削れば食える」の危険 多くのカビ毒は症状がすぐに表れない

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それ以外の代表的なカビ毒は、赤い色素を分泌する特性のあるアカカビが作り出すトリコテセン系の成分である。19世紀末から、シベリアなどでアカカビに汚染された麦で作ったパンを食べたことでしばしば中毒を起こした。頭痛、嘔吐、めまいなどの急性中毒症状と、造血障害や免疫疾患などの慢性中毒症状が知られている。

第2次大戦中のロシアでも飢饉に近い状態に陥り、秋に収穫できずに畑に放置した麦を、雪の下から集めて食料にしようとした。しかし、それらの穀物がアカカビに感染していた。地域によっては、10%以上の人々がその中毒症状に悩まされた。

日本では2000年以降、2つのカビ毒の化学的検査が新たに義務付けられた。デオキシニバレノール(DON)とパツリンについてである。DONは小麦などでよく見られ、先ほど述べたアカカビが作るカビ毒の1つである。暫定基準値が決められて汚染対策がされるようになった。

一方のパツリンは、リンゴの腐敗菌の1つであるPエクスパンサムというアオカビが、リンゴの傷んだ部分に生えて作りだす化学物質だ。パツリンはリンゴやリンゴジュースから主に検出される。生食用にならない傷物のリンゴをジュースなどの加工用の原料にすることがあるために、カビ毒が含まれるのだろう。

新たに規制が検討されているオクラトキシン

今日、新たに規制が検討されているカビ毒に、オクラトキシンがある。コウジカビ属のアスペルギルス(A)オクラセウスなどが生産するカビ毒で、腎臓がんなどの原因になる。

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オクラトキシンに汚染されている食品は幅広く、大麦、小麦、トウモロコシなどの穀類や、豆類やコーヒー豆、さらには肉、乳製品などが知られている。

また、オクラトキシンはイタリアやフランスのブドウ果汁からも、さらに多くのワインからも検出されている。ヨーロッパでは現在、多くの汚染調査が行われている。

日本でも同様に、少量ながら、さまざまな食品にオクラトキシンが含まれている可能性がある。そのため、検査が義務づけられるようになると、これまでとは別次元の大規模な検査体制が必要になる。

食品業界だけでなく、食品の検査・分析機関もその動向を注目している。

浜田 信夫 大阪市立自然史博物館外来研究員

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はまだ のぶお / Nobuo Hamada

1952年、愛知県生まれ。農学博士。京都大学薬学部卒業、同大大学院農学研究科博士課程修了。大阪市立環境科学研究所へ。住環境のカビについて研究し、住宅、エアコン、洗濯機などのカビの生態を解明。2012年より現職。長年にわたり、食品などに生えるカビについて市民からの相談も受けている。著書に『カビはすごい! ヒトの味方か天敵か!?』(朝日文庫)など。

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