「プレスリー」「ビートルズ」は結局何が凄いのか 伝説のアーティストの原点と若者熱狂の背景

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なぜビートルズが優等生のイメージをもたれるようになったかというと、それはマネージャーのプロデュース力のおかげです。ブライアン・エプスタインの考えにより、衣装はスーツを着て、ステージ上で煙草を吸うのはやめて、演奏が終わったらお辞儀をするようになります。

ビートルズは、1966年6月に初来日し、日本での最初で最後となるコンサートを行います。このとき、日本人特有の静かな客席を前に演奏したことで、自分たちのパフォーマンスが落ちてきたことに気づきます。

また、デビュー後から続くハードなスケジュールに疲れ、日本公演後に向かったフィリピンでは暴動に巻き込まれたこともあり、1966年8月末のサンフランシスコでのコンサートをもって、一切のライブ活動を止めることを発表。そうして、レコーディングに時間をかけたアルバムを制作するようになります。

1966年8月に発売されたアルバム『リボルバー(Revolver)』は、LSD(幻覚剤/サイケデリック)による神秘体験が強く影響することになりました。このアルバムでは、音色(おんしょく)で遊ぶようになり、ヴォーカルにエフェクトをつけたり、テープを逆再生させたりといった、録音技術での新しい試みを始めます。

LSDなどのドラッグによる幻覚や神秘体験にインスピレーションを受けた音楽は、「サイケデリック・ロック」と呼ばれるようになりました。

初めての「コンセプト・アルバム」が誕生

1966年11月から1967年4月初めにかけて、ビートルズが制作した『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)』は、彼らが重ねてきた実験が花開く、ポップス史における最重要アルバムの一つです。アルバムは、架空のバンドがショーをしている設定で、オープニングはバンドのテーマで始まり、最初の数曲がメドレー仕立て、最後にまたテーマに戻ります。

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それまでの多くのアルバム制作は、シングル曲を収録することが主な目的でしたが、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は、アルバム全体で聴かせるという発想にシフトした、初めての「コンセプト・アルバム」となったのです。

1967年6月に発売された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』以降は、従来とは異なり、収録曲もアートワークもすべての国で同じものが発売されるようになりました。歌詞を記載したり、デザイン的な工夫を凝らしたりし始めたのもこの頃で、アートワークの重要性も増していきます。

この傾向はほかのアーティストの作品にも及び、アートワークも含めてアルバムの世界観を伝えるということが重要視されていくようになります。コンセプト・アルバムの登場は、カウンターカルチャーだったロックが、より芸術性への志向を高め、ハイカルチャーに挑む表れでした。

みの ミュージシャン

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Mino

1990年シアトル生まれ、千葉育ち。2015年に3人ユニット「カリスマブラザーズ」を結成。YouTube上で動画配信を開始し、チャンネル登録者数100万人を獲得する。2019年より独立し、個人名義のYouTubeチャンネル「みのミュージック」を開設。現在、チャンネル登録者数は30万人を超える。また、ロックバンド「ミノタウロス」としても活躍。2020年にアルバム『肖像』をリリースしている。2021年より、Apple Musicのラジオ番組「Tokyo Highway Radio」のDJを担当している。

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