環境対応で利益減ると思う人が知らない打開策 カギは「モジュール化」「ゴミのアップサイクル」
何かの事業をビジネスとして成立させるためにスケールは必要だ。ビジネスの基本はスケーラビリティであり、それ自体を否定する必要はない。問題はスケールのとらえ方にある。「大量生産、大量消費」が悪いのではなく、その裏にある「大量資源消費、大量廃棄」が環境を痛めつける大きな原因であることに着目すべきだ。
環境を守りながら、スケーラビリティをもって事業を維持するにはどうしたらいいのか、と考えていくと解決の道筋が浮かんでくる。つまり、「大量資源消費、大量廃棄」をやめることと「スケーラビリティ」の2つをトレードオンさせるということだ。
買った製品が壊れてしまったとき、修理に出すか、買い替えるかの選択に悩む人は少なくない。だが、たとえばメーカーが使用後の故障や部品の劣化を考慮して、製品を交換可能ないくつかの構成単位(モジュール)に分けて設計し、交換用に在庫しておけば、故障の際に該当部分だけを修理・交換できるので、継続して長く利用できる。
もちろん、メーカー側にはモジュールの在庫と手厚いメンテナンス体制が求められるが、こうしたビジネスモデルを「モジュール化」と呼ぶ。
製品を顧客に長く使ってもらうことで、企業は部品交換やメンテナンスから利益を得るとともに、顧客の製品使用状況などに関するデータも入手できる。しかも、製品の長寿命化により廃棄量の最小化も図れたうえ、顧客を囲い込むことで長期的な利益を得られるトレードオンを実現できるビジネスモデルだ。
壊れても部品交換ができるスマートフォン
オランダのスマートフォン開発のスタートアップ企業フェアフォンは、原材料の調達から顧客がスマートフォンを利用するまでのバリューチェーン全体で、サステナビリティを軸にして事業を展開している。
同社のスマートフォンは、モジュール式で設計されている。スマートフォン本体は簡単に分解できて、ディスプレイやカメラが壊れても部品交換が可能で、本体を廃棄せずに長く利用できる。また、製造を委託している中国の工場の従業員への待遇改善、紛争地帯の武装勢力の資金源や児童労働につながる鉱物を使用しないなど、バリューチェーン全体で人道面、倫理面に配慮していることで知られている。
廃棄物を資源にするアップサイクルは、使用済み製品の単なる再利用ではなく、高い付加価値を持つ新たな製品に生まれ変わらせるビジネスモデルだ。ゴミに価値を付けることで従来の「売り上げ拡大を実現するには廃棄物増もやむを得ない」というトレードオフの壁を乗り越えられる。つまり、「それまで廃棄コストがかかっていたゴミを収益源に変え、環境負荷を軽減する」というトレードオンが実現する。