環境対応で利益減ると思う人が知らない打開策 カギは「モジュール化」「ゴミのアップサイクル」
ゴミの廃棄コストが安い現在は、大きな利益は見込めないが、ネットゼロやサーキュラー社会に向けて、廃棄にかかる税金やコストが上がっていった場合には、こうしたビジネスモデルがコスト面で強い競争優位性を持つようになるだろう。
例えば、パンは日持ちがせず、廃棄量の多い食品の一つだ。英国では製造されたパンの44%が廃棄されているとの報告もあり、大きな社会問題となっている。マイクロブルワリーを経営する英国のトースト・エールは、パン販売店で売れ残った商品を回収して、麦芽の代わりにパンを使って数種類のビールを醸造し、公式サイトやショップなどで販売している。廃棄パンからビールを生産する同社の方法は、米国、アイスランド、南アフリカなど、世界に広がりつつある。
大量生産は大量資源消費と表裏一体であり、コストメリットを追求すると「世界で最も安い地域から原材料や資源を調達する(あるいは最も安い地域で製品を製造・加工する)」となりがちだ。だが、現地労働者が不当に扱われていないか、原材料の購入が現地の反政府組織や反社会的勢力の資金源になっていないかなど、調達地域の実情を把握して、サプライチェーン全体で人権に配慮した行動が欠かせない。
人権への配慮を価値の源泉として訴求する
ところがここにまた、人権に配慮するとコスト増となり、利益と両立しないというトレードオフの壁が出現する。この問題を解決する一つの方法は、「サプライチェーン全体で人権に配慮していることを外部に広く公開し、それを価値の源泉として消費者に訴求する」やり方だ。
オランダのチョコレート会社、トニーズチョコロンリーは、「100%強制労働に頼らないチョコレートを当たり前に」をミッションに掲げる。原料のカカオ豆はどの農家がつくったのか追跡可能なものを使用し、農家が得るべき収入を計算してフェアトレード以上のプレミアムを支払って、カカオを購入することで優良な農家を育成するなど、5つの調達原則をつくり、業界を内側から変えるだけでなく、消費者を巻き込んだ市民運動に広げようとしている。
同社のチョコレートはカラフルで目を引くパッケージに加え、おいしさや味にもこだわっている。有料広告などを一切打っていないにもかかわらず、こうした企業姿勢は幅広い層の消費者の共感と支持を集め、現在、オランダではナンバーワンの売り上げを誇る企業となった。
人権配慮はコスト増要因であり、利益とは両立しないと考えがちだが、これらの事例のようにやり方次第では、コスト増を大きく上回るメリット(消費者の熱烈な支持が広がる)が得られる可能性がある。
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